夏祭りの悲劇




「むぅ、ルー、二匹」
「ルカ、三匹、ルク兄は?」
「俺は四匹」

夜店に夜でもよく目立つ赤毛を揺らして兄弟たちは夏祭りの雰囲気を楽しんでいた。

「ルークはどうした?」
「ルー兄ならまだお店」
「なんか、人が少なくなってから掬うって」
「ジッと金魚見てたぜ…」

それを聞いた、アッシュとアシュリアは顔を一瞬曇らせる。

「ん、あそこだよ、ルー兄」
「!!!」
「ちょ、ルー兄なんで金魚見ながらうっすら笑ってんだよ」

背中から色の判別がつかないオーラを放っているルークはちょうどお金を払っていたところだった。

「おじさん、バケツ貸して?」
「なんだい、兄ちゃんバケツにでもとろうってのかい?」
「うん!」

悪そびれもなく頷いたルークにおじさんは嘲笑してバケツを出してくれた。

「まずいぞ…アシュリア、あのルーク」
「…う、それ以上言うな、兄上!」

あの時を思い出して、二人は溜め息をつく。

「なんの話?」
「あ、ぁ、あぁ、思い出した…浜辺アサリ事件」
「ただより安いものはない事件だよね?」

有無を言わせない笑顔でアサリをとらされたことは記憶に新しい。

「ルー兄、主夫だもんね」
「特売日前にチラシに印つけて、鬼の主婦軍団に特攻するしね」
「もう、あの時のスーパーは戦場!怖いんだから!」
「求められる新鮮な物への目利き、商品にたいする反射神経!」

うっとりと交互にルーとルカは言う。

「いやいや、そこ尊敬の眼差し向けるとこじゃねぇって」

げんなりとした顔でルクがつっこみをいれる。

「シッ!ルークが金魚掬うぞ!」

閉じていた目をすっと開いて。

「いざっ!」

一声とともに、ルークの手が動き、赤い金魚が空を舞う。

「ちょ、アシュ姉!金魚空飛んでるってば!!」
「ルク、人間だって宇宙まで飛べるんだ、金魚だって不可能じゃないだろう?」
「いや、不可能だろ!こんな時にボケんじゃヌェー!!!」

その間にもルークの手は動き「ふぅ」と溜め息をついた。

「おじさん、ハイ、弱ってる金魚…早く空気いれないと死んじゃうよ?―…早く空気入れなよ」

弱った金魚ばっか混ぜてんじゃねぇよ、屑が!!という目でルークがおじさんを睨む。
なんと、バケツに寄せられたのは夜店特有の弱った金魚たち。

「ちょ、後半誰だよ!ルー兄じゃねぇ!!アシュ兄!目覆ってる場合じゃないって早く止めろよ!!」

目の据わったルークが水槽に残った粋のいい金魚を次々と掬っていく。

「ヒイィ!キモイキモイ!!」

お椀山盛り一杯、赤い金魚にルク也は発狂寸前になってアシュ美を揺さぶった。

「アシュ姉!そんな期待に満ちた眼差ししてる場合じゃないって!!あれじゃ、店の親父商売あがったりだぜ!?!!」

もう、町内を歩けなくなるとルクが訴えると仕方ないと でも言うようにアシュリアがルークに近付いた。

「すまん、ルーク!金魚も一緒だ!」

指を揃えてポーンっとルークを叩いた。

「手刀かよ!!」

ぐらりと倒れたルークの体をアッシュはささえる。

「おじさん、全部頂戴ね」

山盛り一杯を何個かにわけて袋に持つ。

「ん、んぅ、金魚…」
「まだ、金魚って言ってる」

アッシュの背ですやすやと眠っているルークを見ながらルカがぽつりと一言。

「ルー兄、金魚ちゃん唐揚げにでもするのかな?」

さあーっと四人の顔が青ざめていく。

「馬鹿!止めろよ!!」
「でも、さ…ルー兄なら…」
「よせ、それ以上想像するな!」

アシュリアが制止をかけるが、天使の様な笑みを浮かべて唐揚げにされた金魚の山をもってきたルークを全員が思い浮かべてしまう。

「ぅっ…」
「あわわ!お姉ちゃんルク兄吐いちゃうよー!!」
「吐くなら側溝に吐かせろ!」
「…アシュ兄?」
「金魚って食えるのか、ルカ」
「小骨がカリカリして美味しいのかなぁ?どうだろ?」
「っぐ…」
「アシュ兄?」
「気持ちわりぃ…」
「きゃー!お姉ちゃん!アシュ兄もヤバそうだよ!!」
「年長はほっとけ!自分でなんとかする!!」

結局、アシュリアお姉ちゃんがルークを担いで帰りましたとさ。



END





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