世界一可愛い子




自分だってこんな性格なりたくてなったわけじゃない。


「ルカちゃん!」
「何、ルー」

六人の末っ子ルカ。
可愛いから一番大事にされてる。

「ちゅー」
「っん」

甘えるのもすごく得意。

「そろそろ飯だってよ」

三男のルク兄。
めんどくさそうに二階まで呼びにきてくれた。

「うん、今いく」
「ルカ、ルー」
「何?」

じゃれてたうちらを、愛らしいと思ったのか、ルク兄はそれぞれにキスをした。

「「遅い」」

不機嫌そうに席に座っている、長男、アシュ兄と長女アシュ姉。

「ごめーん、アシュ兄、アシュ姉」
「いいから、早く座れ」
「はーい」

ルーはすぐに席についたけど、私は台所にいるもう一人の兄、次男ルー兄のところに向かう。

「手伝ってくれるのかありがとう」

ルー兄は他の兄弟たちとどこか違う。
横暴さがないというか、優しすぎるというか。

「別に、ルー兄のためじゃないもん」

あぁ、可愛くない。
自分でもそう思う。

「あと、持ってくからルー兄座れば?」
「ありがとう、じゃあ頼むな」

私の頭を一度撫でて、ルー兄は怠そうに席に向かう。

ルー兄は、みんなからいじられるうえに、スキンシップも激しくされてる。
昨日も、アシュ兄に声枯れるまで鳴かされてた。


本当は具合だってあんまりよくないのに、この家の家事は全てルー兄の担当だから。

「ありがと、助かった」

ご飯食べてる時に、ルー兄がもう一度お礼を言ってくれた。
本当は、嬉しかったけど照れ臭くて私は聞こえないふりをした。




「ねぇ、ルー兄」
「んー?どうした?」

それぞれが好きな事している食後にルー兄は一人食器を片付けている。

「ルー兄、毎日六人分食事作って片付けして洗濯して、嫌じゃないの?」
「…たまに、嫌な時もあるけど皆が助かってるならそれでいいよ」

にっこりと笑って。


「そうだ、ルカちょっと…」
「何?」

こっそりとルー兄がだしてきたのはお手製のゼリー。

「特別」
「ぁ…ぁりがと」

受け取った私をまた優しく撫でてルー兄は次の仕事に取り掛かった。









アシュ兄ちゃんがルーを構って遊び、アシュ姉はルク兄ちゃんにマッサージさせてる。

なんとなく構ってなんて言えないし。
淋しいからともねだれない。


(何だろ、この軽い疎外感)


席に座って散らばっていた広告を適当に見ていると、ふいにアシュ兄に呼ばれる。

「どうかした?」
「構ってやる」
「え?別にいいっ」

グイっと引っ張られたのを、なんとか振りほどいてルカは逃げた。

「ルーみたいに素直になれ、可愛くねぇぞ」

アシュ兄の言葉に後頭部をガンッと殴られたような気がして。

「…〜っ」
「みんな、そろそろ飯…」

おたまをもったルークが、リビングにきた。

「あ、アシュ兄なんてっだいっきらい!!!」

ルカはルークにぶつかって二階へ駆け上がった。

「おい!アシュ兄!ルカに何言ったんだよ!?」
「…ルーみたいに素直じゃないと可愛くないと言っていたぞ」

アシュリアが横から告げるとルークは持っていた、おたまでアッシュの頭を容赦なく殴った。

「言っていい事と悪いことがある!アシュ兄は飯抜き!ついでに、可愛いから茶化すのにも限度があるだろこの天の邪鬼!」

マシンガンのようにアッシュに告げるとルークも二階へと駆け上がった。

「ルー兄がキレた」
「…普段温厚な奴がキレると恐いな…」
「…アシュ兄格好悪い…」
「うるせぇ…」

ムスッとした顔で拗ねる長男。

「可愛いからいじめるなんて、どこの小学生だ」
「アシュリア、てめぇ鳴かせるぞ」
「はんっ、できるものならな」

鼻で笑われ、さらに撃沈した長男を、三男と三女は憐れんで見ていた。








「ルカ?」
「ほっといてなの!」

クッションが一つ飛んでくる。

「ルー兄だって私のこと可愛くないって思ってる」
「ルカ…」

そっと近寄る。

「ルーみたいに素直じゃないし、甘えるの下手だし…」
「…そんな事ないよ、ルカ」
「ルー兄…?」

兄の抱擁を受け顔を上げると額に軽くキスされた。

「俺は知ってるよ、ルカは優しくて、一番甘えん坊で、可愛いものが好きなんだよな」
「ルー兄、もう一個忘れてるよ」
「ん?」
「ルー兄が一番好き」

涙を手の甲で拭うとルカは兄に擦り寄った。

「ルカ、ご飯食べにいく?」
「もうちょっとルー兄といたい」
「じゃあ、もうちょい二人でいようか」
「うん!」

そう言うと、二人で真っ赤になってキスをした。







「ルカ機嫌治ったみたいだぜ」
「よかったぁー!アシュ兄も来ればよかったのに」
「いや、階段の下の近くで聞き耳たててる」
「あはは〜アシュ兄ヘタレ」

ルーの言葉に跋が悪そうな顔をしたアッシュが階段下であぐらをかいていた。





END




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