長男と三女




「あ、アシュ兄その角右ね」
「あ?デパートは左だろうが」

信号待ちでルーの突然の進路変更。

「やだなー、アシュ兄本気にした?」

にっこりとルー。
こンの、天然子悪魔が…。

「やっぱりワインレッド?」
「うるせぇ、マセガキ」
「鼻血出したくせにー」
「出してねぇ、阿呆」

じゃれた時にルーの肘がたまたま鼻に入ったのだ。

「今日は美術展見て写真撮りたくて…」
「なら、最初からそう言え」
「だって…」
「誰もからかったりしねぇよ、お前のいいところなんだから」

ぽんぽんとアッシュはルーを撫でた。

「アシュ兄、青」

信号が変わってまた走りだす車。

「この間の写真良かったぞ」
「え?」
「あれは、ルークだったな」

パイの時の写真だ。

「何でアシュ兄知ってるの…?」

あれは自分しか知らないはずなのに、なんで…。

「さぁ、何でだろうな」

兄の含み笑いだ。

「…アシュ兄」
「その前の海の写真も俺は好きだけどな」

やっぱり。
雑誌の記事切り抜いたりしてたのアシュ兄だったんだ。

「でもあれは、賞なんて…」

学校の部活でだした写真だ。

「馬鹿だな、写真って賞をとるだけのためにあるもんじゃないだろ」
「お兄ちゃ…」
「よく、頑張ったな」

勉強じゃ追い付けない自分の唯一の誇れる場所。
家族に見られるのは恥ずかしいけど…。


この時の兄の言葉がなにより、金賞…そう思い照れ臭くなって小さく笑った。


END



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