ある吹雪の日の朱





「ただいま」
「お帰り、ルー兄」

降りしきる雪の中買い物をしてくると家にいるのは弟一人。

「こっちきて、暖まりなよ」
「ありがとう」

コートや帽子をかけると座っているルクの隣にちょこんと座る。

「雪、すごかった?」
「うん、やばかった」
「明日から、練習めんどいな」

冬の体育館の寒さを思い浮べたのか、ルクはぶるりと体を震わせる。

「室内競技は毎日、勝負だからな」
「堪ったもんじゃないねっと」

立ち上がるとキッチンに迎う。

「ルク?」
「レモネード、いるだろ?」
「うん!!」

それから、数分でルクが戻ってくる。

「はい、ルー兄」
「ぅぁー、ありがとう」

受け取って一口。

「ん〜っ」
「うまい?」
「ん、すごく…」
「お気に召したようで、お姫さま」

口の達者な弟は、いつもそんな感じで俺の耳から鼓膜、体をくすぐる。

「なーに言ってんだ、馬鹿」
「照れんなよ、ルー兄」
「別に照れてるわけじゃっ」
「しっ嘘つきはナントカの始まりってね」

ルクの体重でぎしりとソファが軋む。

「ぁ、」
「ん…」
「はっ…る、く」
「ん?」
「めっ…」

テレビの音が妙に静かで。
ちゅっとキスの音が部屋中に響く。

「ほら、みんな…きちゃ」
「ルー兄が抵抗しなかったら一回くらいはできる」
「ぁ、もっ…」
「寒いんだろ?二人で暖まろう…こうやって」

手のひらに一度キス。








甘さに溺れていく。
手を重ねて、体を重ねて、心重ねて。




外は吹雪で、他の兄弟たちが帰ってくるまで俺たちはずっとそうしていた。





END






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