アンダンテ6

「俺がルークを引き取るんだ、俺が迎えに行く」
「ああ、場所は「わかってる」

王族がみっともないから走るなよと釘を刺されるがルークは走りそうになるのを抑えられない。

「ルーク様」
「国王からの命だ、捕らえられている罪人の身柄を引き渡してもらおう」
「…こちらです」

連れられてきたルカを見てルークは愕然とした。
酷い体の傷の跡、それから生気のない目でじっとこちらを見つめていた。

「確かに引き渡しを致しました」
「ああ」

ルカを横抱きにすると、足早にファブレ邸に向かう。

「来るの、遅くなってごめんな」
「う、ん…でも、待ってたよ」
「ありがとう、家に帰ったら手当てして体綺麗にしような」
「うん」

二人で握った手の温かさに安堵しながら小さく微笑んだ。

ねぇ、たった少ししか過ごしてないのにいつのまにか俺たち互いに放れられなくなってる。

「少し熱が高いな」
「へい、き…ありがとう、ルーク」
「なんだよ、急にらしくねぇな」
「そ、うか?なんでだ、すげぇ満たされてる」

ああ、幸せだなぁとルカは思うのだ。

「ふ、熱出してて何が幸せなんだよばぁーか」
「酷ぇ、ルーク」
「俺はこんなに優しいじゃん、どこが酷ぇんだ?」
「冗談、大好きだよ」
「なら良し」

この世界に来て、俺は『ルーク』っていう幸せをローレライからもらったんだ。

「なぁ、お前は世界中旅したんだったよな」
「したよ、火山にも世界の端にもいった」
「行こうぜ、一緒に…この世界は旅したことないんだろ?」
「うん、ない」

じゃあ、決まりだと眩しいくらいにルークは笑った。
優しく、温かい手が頬にふってきてルカも熱に浮かされつつも微笑む。

「じゃあ、早く治さなきゃな」

きっと、旅立つ日は晴天だと思いながら静かに目を綴じたのだった。

「いい空だな」
「絶好の旅日和」

一人は赤く長い髪を靡かせ、一人は赤く短い髪を同じように靡かせ、そこに立っていた。

「暫く、このバチカルともお別れだな」
「やっぱり寂しい?」
「いいや、お前が居れば全然そんなことねぇよ」
「…うん、俺も」

人目を盗むように唇を合わせると二人は石畳を蹴って晴天下を歌うように歩いていく。


いつまで続くか、分からない幸せ…でも、繋いだ幸せを何があっても放さないんだと誓いあいながら。




END









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