アンダンテ5


平気なんだ。
怖くない。
アッシュに向けられるあの目。
蔑むような、あの目。

だけど、怖くない。

俺は手引きなんてしてない。
証拠不十分で、釈放されるのだって時間の問題だから。

怖くない、怖くなんてないんだ。



「いい加減認めたらどうだ?ルーク様に取り入ったかなんだか知らんが、今素直に罪を認めればアッシュ様は寛大なお方だ軽い罰で済む」
「俺はそんなことしていない」
「強情なやつだな」
「視野が狭いと真実が見えなくなる、アッシュ様にもそう伝えて」

偉そうに!と聞こえた次の瞬間持っていたのは衝撃だった。

嗚呼、殴られたんだ。

頭は以外と冷静で、ルークは抵抗もせず殴られるしかない。

(まだ、確信もないのに)

こんな拷問まがい…。
今の自分なら制御できるようになった超振動で鎖を破壊することだって可能だ。

(でも、しない)

晴れる。
こ疑いは必ず晴れる。
そうしたら、そうしたら、ルークに、会える。

そう思いながら、ルカの意識は途絶えた。

「おい、ルーク」
「なんだよ、ガイ」
「そう苛々するなって」
「でも、アッシュは国王になってから変わったよ、そう思わないか」

ぎりっとルークは拳を握った。
そんな彼にガイは少し笑みを浮かべ口を開く。

「上に立つっていうのはそういうことかもしれないな、ルーク」
「どういう…?」
「孤高じゃないな…孤立…アッシュは今信じれるものを探してる途中なんじゃないか?でも、そのなかで唯一信じられるのが家族なんだ」
「でも、あんな態度じゃもっと敵作るだけだろ」

その言葉にガイは頷いて肩を叩く。

「だったらお前が気づかせてやれ、行ってこいよ、城に」
「ガイ」
「一発かますくらいがお前だろ、ルーク」
「だな、ちょっと行ってくる!」

パンと膝を叩くとルークはファブレ邸をでた。


「突然来たと思えば、俺は忙しい」

ここは特権。
アッシュの自室にある公務室にルークは乗り込んでいた。

「ルカは怪しい奴じゃなかっただろ、解放してくれ」
「無理だ、確証がないし不法入国は立派な罪だ」

バッサリと切り捨てたアッシュにルークもついにぶちギレる。
思わず、机を叩いて声をあらげる。

「お前のそれってなんなんだよ!俺を、家族を守りたいってのはわかるけどな!!そんなやり方じゃ周りに敵を作るだけだからな!」
「じゃあ、お前は俺にどうしろと?なんでもかんでも信じろというのか?何かが起こってからじゃ遅いんだぞ?」

アッシュは自分と違ってお利口だった。忘れていた。
先を先を読むものだから、どうしても今を見落とす傾向がある。

「でもまだ何にも起きてねぇ!!俺が死ぬようなケガをしたわけでも、アッシュが失脚したわけでもねぇじゃねぇか!!」
「ルーク、どうかその辺にしてくださいませんか?」
「ナタリア?」
「アッシュ、貴方の言ってることは正しいわ…でも、今はルークの話を聞いてあげてください」

今まで黙っていたナタリアがそっと二人に近寄って、おずおずと喋りだした。

「ナタリア」
「信じて失敗したならそれはそれでいいじゃありませんか?何があったとしても貴方は独りじゃないもの…そうでしょう、ルーク」
「ああ、俺はなにがあってもアッシュの味方だ、それに縮こまってるお前はアッシュじゃない、自信持っていい…アッシュは国民に選ばれたんだから」

喩え、どこかの貴族の一派がアッシュを王だと認めていなくても、国民がそれを認めている。

「アッシュ」
「分かった…少し思い詰めすぎていたらしい…すまない」

不法入国の罰に関しては、ルークの管轄の下、ファブレ家に忠誠を誓うというとても軽いものにアッシュはしてくれた。








[*prev] [next#]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -