アンダンテ2


「―…レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ」
「譜歌だろ、それ」
「うん、仲間の一人が歌ってた、俺は意味も象徴もわからないから効果なんてないけど」
「心地いいからもっと歌えよ」
「やだよ、恥ずかしい」

夜、晩餐の場でクリムゾンと言葉を交わしたルカは正式にファブレ家に迎えられた。
帰る術はわからないのだから模索しようとルカは思う。

「国王は今は?」
「アッシュ、俺の兄貴だ…ナタリア姫と結婚して今駆け出しの新米国王だ」
「そうなんだ、本当に幸せな世界でよかった」

ルカは夜風に当たりながらこの世界のルークと言葉を交わす。

「お前は?」
「…俺は、」
「…どうした」
「もう、少しで消えなくちゃいけなかった」
「じゃあ、こっちに来てよかったんじゃねぇか…」
「でも、俺がやらないと」
「いい加減にしろっつーの」

ルークはルカの手を握る。

「ふざけんなよ」
「みんなにもそうやって怒られた…でも、自分の命を軽んじてるわけでもない」
「…お前本当の名前なんて言うんだ」
「ルーク、だよ」
「ルーク、いいか…お前もう自分の世界に帰るなここにいろ!ここならお前が苦しい思いもしなくていい」

力強い腕が今度は体を抱き締めた。二十歳の自分はなんとも温かい体をしているのだろうか。

「温かいよ、ルーク」
「お前もルークじゃんか」
「…もし、俺もこの世界で生まれたなら幸せに「なれる、今からでも遅くねぇって」
「ありがとう」

すがりついてもいいのかなと渋っていると、一回り大きな手が頭を撫で、促してくる。

「なぁ、俺が幸せにしてやっから、ここにいろよ」
「プロポーズみてぇ」
「そうとったらとったでおもしれぇな…俺、お前のこと嫌いじゃないぜ」

冗談で言ったはずなのに、ルークは本気にしたようでルカを抱き締めたまま放さない。
心臓が段々早くなればなるほど早く放れなきゃいけないのに三年上の自分はなかなか逞しいようだ。

「なんてな、半分冗談だって」
「な、な、何すんだよ、も…」
「半分は本気」

額に柔らかく押し当てられる唇は小さな熱を帯びて指先、爪先まで、痺れるような感覚を残していく。

(きもちいい…)

頭を打った時の衝撃で見ている夢でもいい、もう少しこうしていたいとルカは目を綴じた。








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