アンダンテ1


ここは、どこ?
俺は、一体…。


「んだ、てめぇ」
「わぁっ!!」

我ながらなんて間抜けな声なんだと起き上がるとそこには、自分によく似た顔。

「どうやってこんな場所に入って来たんだよ」
「ぇ、いや、俺、俺は…」
「ケガしてんのか?」
「あ、血…」

ローレライに送られ、ルークは別の世界へとやってきた。

「ガイ!!」
「ん、なんだってルーク…おい!!そいつ賊か!?」
「違う、説明めんどくせぇからガイが俺のために連れてきた新しいメイドって言っておけ」
「無茶言うなよ」

確かにどう考えても無茶だろうと言われるとルークと呼ばれた長髪は頭をかいてから手を叩く。

「ペールの孫にでもしとけ」
「あのな、ルー「どうでもいいけどこいつのケガ手当てしてくれ」
「わかった、俺の部屋で手当てしよう」
「俺は母上んとこ話に行ってくる」

そういうとルークは、母シュザンヌの寝室の方に行ってしまった。

「おい、平気か?」
「た、ぶん」
「名前は?」
「ルカ」

咄嗟にルークは嘘をついた。
ここは自分の世界ではないとぼんやりと思う。

「いま、な、に?」
「外の音か?」

かすり傷だらけルカが問うとガイは小さく笑って答える。

「明日、さっきの赤い長髪の成人式典なんだ」
「そう、なんだ」

これで、ここは自分のいた世界はまったく違うと今のでルカは判断した。

「おい、入っていいか?」

控えめなノックと共にルークの声。

「ああ、いいぞ」
「母上に話してきた、話せるようなら連れてこいだってよ…おまえ、大丈夫そうか?」
「うん、へ、き」

体をゆっくりと起こすとルカは立ち上がる。
少し、体は痛むがなんの問題もなさそうだ。

「辛いなら無理すんなよ」
「ありがとう、優しいんだな」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ、とっとと行くぞ」

照れ隠しに自分の先を歩くルークに、ルカは小さく笑った。
この世界での自分は、多少難はあるものの間違うことなく過ごしたようだ。

「母上、連れて参りました」
「奥方様失礼致します」

母、シュザンヌは柔和な笑みを浮かべ二人のルークを待っていた。

「そう、緊張せずにいらっしゃい」
「いえ…私は」
「母上が言ってるんだ、構わねぇって行けよ」

ルークに促され、そっとシュザンヌの下へと、ルカは膝を着いた。
それは自分の母という存在でもあるのに、この世界では自分は王族でもなんでもないのだから、緊張は異常なものである。

「何か大きなことを経験してきたようね」
「…はい、信じてはいただけないとは存じますが私はこの世界には居てはいけない者です」
「…貴方が生きていたところで何があったかはわからないけれど、安心なさい…ここではそんな無理をしなくていいわ」

撫でられる頬にルカはシュザンヌにすがりそうになるのを堪えお辞儀をした。







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