星を探しに行ったのよ。
「おはよう、フランソワ」
教室の右隅の少し空いた隙間に、ルークは今日も挨拶をしている。
クスクスとそんな彼を笑う声が聞こえるが本人は一切きにしていない。
「おい、ルカ、あいつお前の連れだろ、なんとかしろって」
裾を引っ張る友人にルカは、そうかとうなずくとルークの傍に寄る。
「今日は、誰か一緒なのか?」
「ルカちゃん、おはよう!うん!フランソワのお友達が一緒だよ」
頭を撫でるとルークは柔らかい笑みを浮かべてルカの手に嬉しそうにした。
「もうすぐ始業の時間だぞ、フランソワには一回バイバイして」
「はーいっ」
ルークの世界に溶け込むルカに周りは流石だなとその様子を見た。
俺のルークは世間一般でいう所謂、不思議ちゃんの部類。
二頭身(抱えるくらい)のヌイグルミをいつも持ち心の底から楽しそうな笑みで歩いている。
「それでね、昨日はピンクのチーグルとお話したんだよ」
「なんて言ってたんだ?」
「キノコがとっても美味しかったって言ってたよ」
ねーっとツギハギだらけのトクナガという猫のヌイグルミにルークは話しかける。
「それで「うわあぁん!!」
「うぉっ!」
「チーグルがチーグルが!」
公園を通りかかると中から飛び出してきた小さな子が勢いよく、ルカにぶつかる。
「チーグルがどうした?」
「公園でお世話してたらいなくなっちゃったの」
またケガしてない?
どうしよう、どうしよう、と慌てる子供にルークは小さく笑みを浮かべた。
「チーグルはね、星を探しに言ったんだよ」
「星?」
「そう、これに良く似た星の欠片」
取り出した瓶に入っていたのは金平糖。
「チーグルはね、一人前になる為に欠片を探すの、君に助けてもらって元気になったチーグルは、きっとそれを探しに行ったんだよ」
「ホントに!」
「うん、きっと元気にしてる」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「金平糖、食べて帰るんだよ」
ひらひらと手をふって別れると、ルークはルカの袖口をくいくいと引っ張った。
「みんながみんな一人前になるとは限らない、でもそれを知るのはずっとずっと大きくなってからでいいの」
「優しい嘘も時には必要だ、今はその時だったぜ」
ポロポロと涙を溢すルークの頭を優しく抱き寄せて、ルカはその天辺にキスを落とした。
風変わりな彼の優しい嘘。
END
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