無題3



「俺が雇った影武者だ、俺意外が使用人扱いすることは何人たりとも許さない、丁重に扱え」
「承知いたしました」

そういえば誰も声をあらげずに、お辞儀をした。

「坊ちゃま」
「ラムダス、外は物騒だがこいつは剣もできる、護衛兼影武者だ」
「ルカ様の部屋はどちらに致しましょう?」
「今日の夜までに俺の部屋にベッドを用意しろ」
「承知いたしました」

深々とあのラムダスでさえ頭を下げた。本当にこいつは自分なのかルーク、もといルカは頭を押さえる。

「…必要最低限だけだ」
「え?」
「城に公務に行く、その時だけ一瞬鳥籠から解き放たれる」
「でも、すごいじゃん」
「お前はもっと知識を身につけろ、借りにも俺の影武者だ」
「教えてくれよ」
「調子に乗るな、俺たちは対等じゃない、分かってるだろ?」
「…利害の一致、俺たちはそれ以上でもそれ以下でもない」
「分かってるならいい」

堅苦しいのか服の前を開けるとルークは自室へと向かう。俺は黙ってそれに続いた。


ルークの欲しいもの、それは、自由。
そう、彼は言ったのだ。


「…お前も俺も馬鹿じゃない、だからお前は時間を遡ってここにいるし、俺は未来を知ってここにいる」
「ルーク」
「俺は、駒で終わる人生なんざ真っ平ごめんだ…俺がレプリカで、消えるだけの人生だとしても俺は最期まで俺でいたいんだ」

もう一人の自分はこんなに、生に素直だ。
ルカは、自分の左胸に手を置く…こんなに素直になって自分も生きてみたい、そう許されるなら。

「誰に許しを乞うんだよ」
「え…」
「髭か?オリジナルか?死んでいった人間か?消えていったレプリカか?」
「全部、かな」
「…こいつは予想以上の馬鹿だ、本当に全部お前のせいなのかよ」
「誰のせいにもできないから」
「だから自分のせい、か…お前が戻ってきた理由分かってきた」

軽くため息をついて、ルークはいつもの格好に着替えていく。

「…俺はただ、アクゼリュスの人たちが助かればいい、そしたら消えてもいいってそう思ってた」

でも、違う。今は、違う。
消えることに怯える日々も死ぬ恐怖も、全部知っている。
生きたいけれども、そこにすがってはもうその恐怖に耐えきれない…。

「怖い、怖いんだ」
「ルカ」

そんな同じ手が涙を脱ぐうと両手で、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。

「俺は、アクゼリュスまで行った後、こんな風になっちまったんだな」
「?」
「俺に未来の記憶があるのは、髪を切るまでだからなその後のことはわからない」
「…」
「でも、そういうお前だから生きたいとか生きてることがどんなにいいか知ってるんだろ」

力強い声にルカはこくりと頷いた。

「じゃあ、生きろよ…誰が許すことでもない、お前が勝手に許してないだけだ」
「…ありがとう、ルーク」

直ぐには無理だけど、そう思えるようにがんばるから。
そう思いながら、微笑むと、耳を赤くしたルークはぷいっとそっぽを向いた。











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