lovenight1


「はい、お疲れさま」
「ルークさんありがとうございます」
「最近、頑張ってるね」
「はい!」

界隈の一角にあるホストクラブ。
ホストたちに笑みを浮かべ労うルークは、一部では天使とまで言われている。
女の世界を知っている彼らにはルークが天使か聖女に見えるらしい。

「先に上がるぞ」
「アッシュ、お疲れさま」
「ああ、ルークもな」
「ルカは?」
「飲みすぎて伸びてるんじゃないか?」

アッシュの言葉にソファにいけば長い足を靴をはいたまま放り出しているルカがいた。

「ルカくん、起きてよ」
「ん…あれぇ、女神がいる」
「何言ってんの、寝ぼけてる?」
「寝ぼけてる?誰が?俺が?」
「もう、あんまり調子に乗って飲むから」
「ルーク」
「ん?」
「エッチしたい」
「何言ってんの仕事中、ちゃっちゃと掃除してよ」

もう言ってることが繋がってないし、何よりこんな誰がいるかわからない場所でこの男は何を言っているのだろうか。

「だめ?」
「ぅ…」
「なぁ、ルーク」
「…キスだけ、後は帰ってから」

言えば、ルカはゆっくりとルークを引き、優しく唇を寄せる。
だんだんと深くなるのを、理性を総動員して止めた。不機嫌そうに歪む眉に、「だから帰ってから」と耳に寄せるとルークも自分の業務に戻っていく。

(あの頃はあんな感じじゃなかったのに)

雨の中倒れていたルカを拾ったことを今でも覚えている。心も体もきずだらけで、人間不信だった頃の彼は微塵に感じさせない。

(でも、まぁ、いいか)

元々人懐っこい性格だし、気もきく方なので接客業は向いてるし、なにより女の子も好きなのでこの業界にはバッチリだ。

「ふあぁ…眠い、ルーク終わった」
「もう?やればできるんだからもっと早くやってよ」
「んー…」
「ルカくん、お家まで寝ないで」
「うん…」

ふらふらの彼を連れて帰るとルークはそのままベッドにその体を放る。

「もっと、そっとおいてくれよ…」
「だって重いの!俺より重量あるんだからちゃんと歩いてよ!」
「…こんなにいい男掴まえて、人のことデブっていいたいのか?」
「誰もそんなこと言ってない!ちょっと、やだ!はーなーしーてー!!!」

腰をだかれてルカの上に乗る形になってしまう。

「家に帰ったらしてもいいって言ったよな」
「あっ、こらぁっ!足動かすなっンッ!」

膝で股関を押され、じんとしたものが背中を走る。

「やだっ、ルカくんっ!」
「足がやなの?」
「違う!お風呂も何も使ってないの!臭い、汚い!」
「そんなの、今さらだろー」

リズミカルに足を擦りあげられルークはビクビクと震えた。
止めてくれといっても相手は酔っぱらいで止めてくれそうにない。
しかも、ルークよりも力が強い分、敵いそうにない。

「はんっ、やぁっ」
「可愛い、ルーク」
「ぅんんっ!!」

イッてしまったことに自己嫌悪になり、ルークは涙目でため息を吐いた。
絶対、調子に乗るぞとルカを見れば明らかに嬉しそうで。

「…」
「もう、意地悪止めるからさ」
「…」
「してもいい?」
「…バカ」

調子に乗せてしまう自分が悪いのだけれど、なんだか悔しくて一言言い放つと首に腕を絡めた。

「ちょっと、立てないんだけどルカくん」
「まだ時間あるし大丈夫だろ」
「…今日、同伴?」
「そ、迎えに行かなきゃ」
「…」
「嫉妬した?」
「そんなわけないだろ…」

腰痛いと寝返りをうって、ルークはルカの方をむく。

「もう、三年か…ルカくん君はどこから来たの?」
「今さらそんな話するのか?」
「嫌だったら話さなくていいよ…ただ俺はルカくんのことだから聞きたいだけ」
「高校辞めて家出して、この界隈で毎日ケンカして、あの日は一気に六人くらい相手にしてた」
「俺と会った日?」
「そ…びっくりしたな、俺みたいな奴に優しくしてくれるのまだいたんだって思った」
「…そんな大袈裟な」
「あの時はルークはまだホストだったよな」
「そうだね…仕事帰りだった」

怪我だけ手当てしようと、ルークに手を引かれてたどり着いた先がこの部屋だ。
身なりでホストだってわかってたから、どんな派手な生活だろうと思えば…。
大きなベッドが一つに、テレビとテーブルと観葉植物が一つ。

「ルカくん、売れてないのとか本当に失礼な子だったよね」
「悪かったってば、元ナンバーワンホストに失礼しました」
「別にいいんだけどさ」
「つか…昔のこと、思い出しても恥ずかしいだけなんだけど」
「俺は恥ずかしくないよ」
「…初エッチの話までしたいの?」
「馬鹿」

でも、ルカが来てからその辺が変わったのもまた事実だったりする。

「ルーク、あの頃彼女いたよな、なんでふっちまったんだ?」
「違うよ、フラれたの」
「…何で?」
「…障害だったの」
「何の?」
「…女の子の中に出せない障害」
「そんなのあるの?」
「あるの」

結婚まで行きそうで、ルークだってその子が大好きだった。

(でも、本当によく考えたらセックスに集中できなかったかも)

それも今まで付き合った子全部。

「でも、まぁ、俺には結果オーライ」
「…俺も」

元々淡白だったせいもあり、ルークはルカが押し倒してきても拒まなかった。
ルカも最初はルークに嫌がらせのつもりだったのに、まったく嫌な素振りを見せないルークをそのまま抱いてしまったのだ。

「ルカくん、そろそろ行かなくちゃ」
「ああ、そうだな」
「今日の洋服、あれね」
「さんきゅ」
「お店でいるから」
「うん」

お互い寂しくて、寂しさを埋めるうちに好きになって離れられなくなったことをルークもルカも充分理解している。
扉を開けて、出ていくルカの背が歪んだ。
思い返していけば、こんなにルカが好きなことを確認できる。

「ルーク、俺の財布って…なんで泣いてんの…そんなに腰痛い?」
「違うよ、ルカくんと会えて本当によかったなって思えたら涙でてきちゃっただけ」
「…それ言われたらすごく行きづらいんだけど」
「俺も行かないでって言いたいけどだめ」
「ですよねー…」

軽いキスを交わして、ルークとルカは額を合わせる。

「また後で」
「うん」


ルカが仕事に先に出てからルークはゆっくりと立ち上がり、シャワーを使うと出勤の準備を始めた。


(仕事なんだって分かってても)

女の子を相手にする姿は面白くないとルークだって思う。
シャンパンコールと共に、今夜も何本もの高級品の栓が開いていく。

「お客様、困りますっ!」
「うるさい、どけっ!」

そんな声がして、入り口までかけていくとボーイが一人殴り倒されているところだった。
気づいた女の子から悲鳴が上がりルークが止めに男と女の子の間に入る。

「お客様、何かご用ですか?」
「俺の女がここに入ってくのを見たんだ、いけすかねぇ赤い髪のホストとよ」
「他のお客様のご迷惑になります、あちらの奥でお話を伺いますから」
「んだと、うるせぇなこいつ!」

拳をふりかざした男にルークは仕方ないと思い構える。
が、その前にルカが割り込んできて、腕を強く掴むとそのまま男を床に倒してしまった。

「アッシュ!」
「了解」

氷と溶けた水がいっぱいの容器をアッシュは男の顔にぶちまけた。

「とっととお帰りください、お客様」
「出ないと、警察呼びますよ」
「ちっ!」

警察という文字に反応した男は一目散に店から出ていく。
ルカは、パンパンと大きく手を叩くと「飲み直そうぜ」と声を上げる。
そして、まるで、何事もなかったかのようにその場は綺麗におさまったのだった。


「オーナー」
「ルーク、悪かったな大変な時にいなくて、きちんとお客様には対処したな?」
「はい、指示通りに」
「ならよしだ、なぁジェイド」
「えぇ、損害は最小限でした、上出来です」

ルークは話が終わるとゆっくりと伸びをして店内の掃除にかかった。

「ただいま」
「あれ、ルカくん終わったの?直接帰ったのかと思ってた」
「部屋帰ったらルークいなかったから、こっちにきたんだよ」
「今帰ろうとしてたとこ」

「じゃあ、帰ろ」
「うん」

何故かルカが帰り道、手を離さない。

「ルカくん?」
「心配だから近くにいて」
「今日のこと?心配性なんだから」
「…俺、お前に何かあったら確実に駄目になる」
「大丈夫、俺はずっとルカくんの傍にいるよ」
「ああいうの来たら、構えないで呼んでくれ…ルーク、頼むから」
「俺にだって若くて可愛いホストを守る義務があるんだよ」
「それでも…頼むから」

部屋の扉の前でぎゅうっと抱きついてきたルカに、ルークは小さく息をはく。

「うん、ちゃんとルカくんに言う…」
「ルーク…」
「ん…ここ、外…」
「もっかいだけ…」

浅いキスから、深いキスにゾクッと背筋が泡立つ。
ちゅぷ、ちゃぷと舌を交わす度に音が響いて。

「る、かくっ…おうち、はいろっ」
「…っ」
「あ、だめ…ベッドまで、まってぇ、ぁっ」
「無理いうなって…」

中に入ると、身ぐるみをはぐように脱がされ、ジャケットやシャツが廊下に落ちていく。

「ルカくん!」
「む…じゃあ、掴まってて」
「わぁっ!自分で歩くから!」
「いいから暴れんな」

荒々しくベッドに落とされ、スプリングがギシリと軋む。

「もう我慢できない」
「あんっ…!」

胸から乳首を優しく愛撫されルークは思わず声をあげた。

「やだっ、やんっ!あんっ!」
「いや?嘘つき」
「ひぁっ」

ぴんっと弾かれ、背がしなった。
こういうことをするようになってすっかり、ルカに躾られた気がする。

「好きだろ?」
「バカバカッ!ルカくんの意地悪っ誰のせいでっ!」

ルークが顔を真っ赤にして、容赦なくルカの肩を叩く。

「…俺のせいだよ、可愛いルーク」

耳元でささやかれると、理性ごと一気に全てを持っていかれた。



「もう…いぃ?」
「ん、はやくっほしぃ、からぁ」

散々焦らされ、ほぐされ柔らかくなったルークの蕾はルカのを求めてひくんひくんと息づく。

「ここ、はやくぅ…」
「いれるよ…」

いきり立つ自身を当てると、ルークは切なさそうに声をあげた。

「ぁあっ、んっ」
「力、抜いてて」
「ひっやあぁぁっ!」

一気に奥まで挿入され、ルークの口から悲鳴がもれる。

「あっん、あっん…ゃらっ!まだ、うごいちゃ」
「待てない」
「るかくっ、るかくん、ゆっくりしてぇっ」
「これでも、ゆっくりだよ」

腰を揺らす度に結合部からはぐちゅんぐちゅんと濡れた音が響いて。

「らって、きもちぃっ!すぐ、いっちゃぅ!」
「いいぜ、好きなだけ」
「んぁあぁっ!」

前立腺を突き上げれば、眉をひそめ、甲高い声とともにびゅくっとルークのものから精液が飛ぶ。

「んっぁっふっあっ」
「はは、いい具合に締まる…もっとイって」
「なっ、ぁああっ!」

突き上げる度にルークの精液が散り、中を擦るルカを締め付ける。

「っは」
「はげしっ、るかくっるかぁっ!」

ダメとでもいうように、ルークはルカね腹に腕を突っ張るようにするが意味をなさない。
蕩けきっているのに嫌がる仕草が、さらにルカを興奮させる。

「あっあっ!ひっあんっ!」
「ルークっルーク!」
「やらっやぁっ!いっちゃ、またいっちゃうよぉっ!!」
「いいぜっ」
「ひぅっ!おくおくっあた、るっぁああああぁーっ!!!」


中にルカの熱いものを感じるとルークは大きく息を吐いて瞳を閉じた。



「んっ」
「起きた?おはよ」
「おはよ…」

寝ぼけ声のルークの体にルカは、ちゅっちゅっと音をたてながら口付けていく。
「こら…」
「いいだろ、今日休みだし」
「もー」
「休日はルークの独占日」
「俺だって休みはルカくんの独占日」

目を合わせて小さく笑うと、二人で休み楽しむためにまたベッドへと沈んでいった。



END







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