12


「もっと沈んでるかと思ったのに」
「沈むも何も、ルカさん毎日電話かけてくるから」
「ルカって女子みたい」
「早く帰りたい、早く帰りたいって言ってたよ」

アニスとティアと店の片付けを終え、看板をクローズにし、カウンターで皆で座りガイの作った新作スイーツを口に運ぶ。

「んで、いつ頃帰ってくるって?」
「わかんない、当分無理そうなのはわかったけど」
「2ヶ月たったけど、ルカ本当によく我慢してるわね」

ティアが言えば、アニスもルークも同意するように頷く。

「味はどうだい?」
「しつこくなくて美味しいと思うわ」
「甘さ控えめで、次の商品これがいいな」
「じゃあ、次これにしよう」
「一つ、甘いのも作ったらいいんじゃないかな、同じ材料使って」

意見をガイはメモすると大きく頷いた。

「ルカのやつ早く帰ってくるといいな」
「それは、そうなんですけどね」

会話を遮るように携帯が音をたてる。

「ルカさん、今日何回目だと思ってるんですか!
え、電源切れてたって当たり前です、バイト中だったんですから…嫌いだったら電話に出ません、好きですよ」

カウンターの席を立って遠くに話ながら電話をし始めたルークに、四人は、はいはい、ごちそうさまと苦笑していた。

「ルーク、俺に対する愛が少ない!」

いつもなら着ないスーツのジャケットをぶん投げるとルカは物凄く機嫌の悪そうな顔をする。

「俺、どうせ毎日怒られるのにこの家にいるの超やなんだけど」
『ルカさんそういえばお家に呼ばれた理由、なんだったんですか?』
「あぁ、じじいが死にそうらしいから呼ばれたんだ」
『…そうなんですか』
「ありゃまだ当分逝かねぇぞ」
『元気なのが一番です!』「まぁな、ルークまた電話する、呼ばれた」
『あ、はい、また後で』

通話を切るとルカはノックの声に返事をする。

「失礼します」
「じじいが呼んでるんだろ」
「はい、お連れするようにと申し付けられました」
「今行く」

全くさっきも会っただろうに何の用だと思いながら歩く。

「じじい、何の用だ」
「まぁ、座りなさい」

促されてルカは渋々座ってベッドに腰かける祖父に目をやる。

「お前は何がほしい?金か、土地か?」
「遺産の話?」
「そうだ、元々そのつもりで呼んだのだ、お前も私の可愛い孫だからな」
「金も土地も要らねー、そうだな、じじいが趣味で集めたティーセットと、昔乗ってたバイクくれよ、俺それでいいから」

そう言って笑えば、ベッドの祖父もふっと口を緩める。

「それだけでいいのか?みんなそれぞれ私の財産が欲しいみたいだが」
「俺はいいよ、今の生活に金も土地も必要ないし…それよりじじい、ティーセット使ってみたいんだ、紅茶飲むだろ?」
「それならメイドに」
「いい、俺がやる…淹れるから飲んでくれよ」
「わかった」

自然と力が入る。
久しぶりだからか、祖父の前だからかは分からないが、いい気持ちで最後まで淹れ終わると、紅茶を静かに出した。








[*prev] [next#]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -