とびっきり甘いミルクティーの後のビターなキス。

(苦い…)

休憩ついでに一服してきた後らしい、ルカの舌は煙草の味がする。

「ルーク?」
「苦い…」
「あれ、嫌だった?悪い」

ルカに頭を撫でられルークは首を振る。

「ルカさんの味、好きだから平気」
「もうちょいで仕事あがりでよかった」
「どうして?」
「だれかさんが興奮させるこというから…早く抱きたい」
「俺も、なんだか今日はずっとルカさんが恋しいから早く掃除してきますっ」

ルカの胸を押して、ルークはそう言い残して店内へと戻っていった。


「…」
「ルカさん?」
「…」
「ルカさん!」
「あ、悪い」
「考えごとですか?」
「んー…ちょっとな」

誤魔化すように頭を撫でてたルカにルークは少しだけむっとした。
ルカの様子がどこかおかしいのだ。

「なにか、悩み事ですか?」
「なーんにもちょっとぼーっとしてただけ、ほら行こうぜ」

んっと出された手をルークは握って横目でその姿を見る。


楽天家、24歳、長髪、かっこいい、帰国子女、車よりバイク派、お茶好き、お菓子も好き…。

(あれ、俺、もしかして以外とこの人のこと知らないのかも)

ルークはそう思って愕然とした。
別に恋人だからって何もかも知っていて、共有しなければならないというルールはないのだけれど…。

(知らないなら知らないで)

それはちょっと寂しいなとルークは握る手を強くした。

「こりゃまた」
「酷いわね…」

テストの結果が来て、学生組はそれぞれの結果で盛り上がる。

「ルーク、英語破滅的じゃん」
「アニスだって、国語壊滅的じゃん」
「二人とも、ケンカはだめよ」

にらみあう二人をティアが宥める。

「そうだ、ルーク、ルカに英語教わったらいいじゃん」
「そうね、あぁ見えて彼英語ペラペラなのよ」
「でも、教えてくれるかな?」

そんなことを言っていると横から手がのびてルカが成績通知表を取り上げる。

「あらら、英語が壊滅的」
「う、」
「ルークちゃんダメじゃん」
「…そんなこと言うなら教えてくださいよ」
「うん?いいよ、なんなら他のも見てやろうか?」
「ルカさんそんなにできるんですか?」
「そんなにって失礼な言い方するなよ、一応高校のならギリギリ教えられるよ」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、ルークはぷぅっと頬を膨らませる。

「ルカは、成りはどうあれ一応いいとこの坊っちゃんですから」
「ジェイド!!」
「おや、失礼しました、皆さんご存知かと思いまして」
「とっくに勘当されてる家の話なんて出すなよ、とりあえずルーク、ちゃんと勉強教えてやっから」
「よろしくお願いします」

ルカさんに実家の話はタブーなのか、ルークはさっきの彼の剣幕に少々びっくりしつつ頷いた。

「どうした、ルーク」
「俺、もっとルカさんのこと知りたいです」
「…いいよ、なんでも答えやる、ただし、勉強ちゃんとできたらな」

その日、ルークは勉強道具を持ってルカの部屋に向かう。

「よ、辞書持ってきたか?」
「あ」
「俺もあるからいいけどな、ほい、こっち座って手とり足取り、腰とりから教えてやるから」

ぱちんとウィンクをしたルカにお手柔らかにとルークは小さく笑って項垂れた。

「ふん、こんなもんか」
「うぇ、疲れた」
「なに、飲みたい?」
「え、いいの?」
「いいよ、頑張ったらご褒美が必要だろ」

ルカはルークの頭を撫でると、キッチンでお湯を沸かし始める。

「ルカさん、携帯、着信来てるよ」
「こっち投げてー」
「はいっ」
「ナイスーキャッチ、俺」

開いたルカの顔が一瞬にして曇る。

「はい、もしもし」

信じられないくらい怖い声にルークは黙ってその電話の様子を見ていた。

「ルカさん」
「あ、わりぃ、大丈夫だから」
「大丈夫じゃない…」

眉間によるシワを伸ばし撫でながら、額にそっと唇をあてる。

「俺じゃ、やっぱりダメ?頼りにならない?」

ルークの瞳が揺れるのをルカは見逃さない。
そうじゃないんだと言いながら優しく抱きしめて首をふる。

「ルークが悪いことなんて何一つないから」

そういうとキスの雨が降ってきて、パーカーの隙間から大きな手が体を撫でる。
「ルカさんっんっ」
「電話のことは忘れて、な」

はぐらかされている。
そう気づいてしまって急にルークは悲しくなった。
割りきれない部分が塗り固められて増えていく。

「ルカさん、ルカさん」

近くにいるのにすごく遠くて、ただ泣くしかない自分にルークは唇を噛んだ。






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