二週間以内にあんたを落とす




「導師様ー!」

駆け寄ってきた子供に、兵士がそっと剣に手をかける。
ルカはそれを見逃さずに制止をかけると、同じ背丈に屈んだ。

「豊穣のお祈りのおかげで今年はお花も沢山咲きました、導師様に受け取ってほしくて」
「貴重な花をありがとう」
「お忙しいのにお呼び止めしてすみませんでした」
「構わないよ、君の行く道がにユリアの祝福がありますように」

子供の額に祝福のキスをして手をふると、ルカは教会へと入って行った。

「アニス、花瓶をくれるか?」
「私がやりますよ〜」
「いや、いい…それより長旅で疲れただろ、両親に顔だしてやれ」
「いいんですかぁ、導師様」
「お前にそう言われると気持ち悪いな悪友」
「一応公式な場ですから」
「用があればまた呼ぶ、花瓶だけよろしくな」
「わかりましたー」

導師守護役のアニスと別れるとルカはため息を吐いて歩き出した。

「ルークせんせ、遊ぼうよー」
「こらこら、まだ勉強終わらないだろ、だーめ」
「あ、導師様だ!」
「ホントだー!!」
「導師さまー!」

ルークが止める暇もなく、一斉に新しい導師に向かって手をふる子供たち。
どんな顔して返すのかと思えば、信じられないくらい穏やかな笑みで兄は手を振った。

(あんな顔初めてみた)

どこか作り笑いをする兄があんなに優しく微笑むとは思わなかった。
そんなルークに気づいたのか、ルカ一瞬意地悪そうな顔をして去っていく。

「はい、みんな続きするよ」
ぱんぱんと手を叩くとルークは授業を再開した。







用意された花瓶に花を飾り、ルカは静かに資料を捲る。
間もなくするとコンコンと扉をノックする音。
おかしい、午後は誰も来る予定はなかった筈だとルカは、護身用の剣に右手をかける。

「どうぞ」

声をかけると扉が開く。
ただ入った相手が見当たらず、下に目線をやると多分ルークの授業を受けている子供が二人入ってきた。

「どうしさま」
「まー」
「…ここまでよく来れたな、おいで」

警戒を解いて手招きすると、笑顔で二人はやってきた。

「二人とも抱っこだ」

両膝に一人ずつ乗せてルカは頭を撫でた。

「隠れてきたのか?」
「おにいさんたちに、あいたいっていうと、だめっていわれてかえされちゃうの」
「のー」
「でもどうしても、あいたくて」

しゅんと頭を垂れた姉に、それほど何か用があったのかまた優しく問うと、小さな子供たちの願いは医者が近くに欲しいという事だった。

「おじいちゃんとおばあちゃんは大通りの医者までいくことができないか、わかった…なんとかしような」

指切りをすると、またノックが響いて返事をする前に失礼しますとルークが入ってきた。

「導師様申し訳ありません」
「構わない、二人ともまたおいで」
「さようなら、どうしさま」
「まー」

ルークは近くにいた者に子供たちを送るように頼むとルカの元へと戻った。

「本当に申し訳ありませんでした」
「気にしなくていいって言っただろ」
「いえ、私の不行き届きで執務のお邪魔を「ルーク」

呼ばれてびくりと体を震わす。
いつの間にかあの時と同じように兄がすぐ傍にいる。
顔が近い、何より唇が触れそうでルークは顔を反らした。

「こっちむけ」
「い、嫌です…」
「ルーク」
「今、兄さまは、い、意地悪な顔をしています、だから、嫌です」
「誰が、意地悪な顔をしてるって?」

こちらを向かないルークに痺れを切らし、ルカは耳に軽く噛みついた。

「ッ!」
「ルーク」
「ひゃっ!ぁっ」

つぅっと舌で首筋を舐めるとルークが甘い声をあげる。

「ゃんっ、痛っ!」

きつく吸い付くと法衣に隠れる肌に不釣り合いな花びらが散った。

「そうだな、消える頃だ」
「ぇ」



"二週間以内にお前を落とす"



END



「二週間以内にあんたを落とす」



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