虚像が笑う
いつの間にかそれに夢中になってた。
気持ちいい。
自分の指先でも充分だった。
気持ちいい。
躊躇なんて言葉はもうとっくに消えて無くなった。
気持ちいいところを好きなだけ触って果てるのが凄く良かった。
それでも、欲望は尽きなくて大きくなって…妄想は酷くなる。アッシュもティアもガイもジェイドもナタリアもアニスも、妄想で相手にしながら自慰をした。
けど、ある日気づいたら俺は鏡に口づけていた。
自分の恥ずかしい姿に、自分で興奮している。
(こんなのっ…ただの変態だ…)
それでも止まらなかった。
ひんやりした鏡が段々と自分の熱で熱くなり、曇っていく。
「ぁっ…んくっ!んんっ!」
鏡に映るルークに舌も、乳首も、先端も、全部が擦れあう。
「なぁ、いきそぉ?おれも、いきそぅっあぁっ!!」
弾けた精液がルークを汚す。
すると、鏡の中の自分も気持ち良さそうにうっとりと精液で汚れていた。
いつか、誰かに奥の奥まで触られたいとどこかで願いながらルークは深い深いため息をついた。
「ん…っ」
着衣を乱しながらルークは熱っぽい息を吐く。
こんなところが感じるだなんて本当に誰から教わったのだろう。
(乳首、きもちいぃ…)
夢中で弄っていると、ベッドが急にギシリと軋む。
「え…」
目を開けると、にやりと笑って自分を見下ろす自分。
「…なに、?」
「惚けるなよ、呼んだくせに、お前は俺を呼んだ」
「知らないっ呼んでなんか、ない!」
「そうか?ホントに?誰かに触られたいとかそんなことばかり考えてたくせに」
言い当てられルークは真っ赤になった。誰ともわからない人物は髪が長くてまるで昔の自分だ。
「俺はお前の欲望が具現化したもの…」
「そんな…」
「言わばお前自身…たっぷりきもちよくしてやるから」
「…やっ」
「体と思考は正直でいいな…期待してるくせに」
ズボンの上から撫でられる。
固くなったそこと、異常な状態に興奮しきってて、言葉じゃ否定してても与えられる快感の想像がつかなくて、ゆっくりと力を抜いてしまった。
「死ぬほどきもちよくしてやるよ」
それは洒落にならないなぁとルークは答えると、自身だと答えた存在に酔うようにキスをした。
「ぁっああぁっ!!」
「自分からケツふって、そんなにいいかよっ!」
「うあぁっ!イィッイィッよぉ!!」
腰だけを高く上げた格好でルークは、口の端からだらしなく唾液が溢れシーツを汚す。
「あんっ!あっ!もっと、ついてぇっ!!!」
「初めてのくせに、きゅうきゅう締め付けやがって」
「ん、あぅっ!あんっ」
「鏡見て弄るよりずっといいだろっ?」
「ん、いぃっきもちいいよぉ!ぅやっ!もっイッちゃう!」
「あ?まだ早ぇって、っ!」
「ぁああっんっ!」
止める間もなく、びゅくびゅくとシーツに精液を放つ。
あまりの良さに体は痙攣して、ルークは世話しなく息をする。
「誰がイッていいって言ったよ」
「ごめ、きもちよくて…がまんできなくて…ん、」
四つん這いから、正常位に戻すと、もう一人のルークは悪戯っぽい笑みを浮かべるとゆっくりと、自身を抜き始めた。
「んんっ!やっやだっ、まだぬかないでぇっ!」
「っ…」
「やあぁっ!」
抜ける瞬間も良かったのか、ルークの鈴口からはポタポタと白濁が滴り、朱毛の茂みに落ちる。
「…動いてるぜ、綺麗なピンクだ」
「もう、おわり…なの?」
ぐずる赤子の様な顔をするルークに、笑みを浮かべてまさかと答えた。
「止めねーよ、イキ足りないだろ」
こくこくと頷くルークの真っ赤になった乳首を、ピンッと一度指で弾く。
「あっ!」
「敏感」
足を持ち上げ、ルークの身体を折り畳むようにすると、猛ったものを一気にまた蕾へと捩じ込んだ。
「っっ!!!」
余りの衝撃にルークは声がでない。
中のものをこれでもかというぐらい締め付けて、感じとる。
「っほら、息吐け」
「はっ、おしり、じんじんするよぉ」
「もっと奥まで感じさせてやるよ」
抜かずに体重だけで突かれる。
腹の奥までズンズンと響きさっきよりももっと気持ちいい。
「あっ!あっ!んっあっ」
「当たってんのわかるだろ?」
「すごいっ、すごいのっ、おく、あたって、おなかのなかまでひびくっ!」
先走りがルークの頬に落ちる。
息はだんだんと荒くなり、喘ぎ声もあわせて高くなってきた。
「かお、かかっちゃぅっ」
「嫌ならこの格好止める?」
「やらぁっ、もっと、ずんずんしてぇっ!!」
「淫乱」
「あんっあぁっ!ひっんっ!」
激しくなる律動にベッドもギシギシと軋み、半ばルークも悲鳴をあげる。
「らめっ、もっやらあぁっ!」
「くっ!」
「っちゃうっ!イッちゃうよぉっ!!あー!」
「中に、出すからなっ!」
「だしてっだしてぇっ!!いっぱい、なかにっひゃぁっぁあああぁっ!」
生暖かい液体が顔にかかる。
粘質を帯びた自分の精液が口の端から溢れて滴った。
「満足か?」
「ん…、また、してね」
意識がまどろみ、とろりとした甘さだけを残してルークは目を綴じた。
「ルーク、起きろ」
「ガイ?」
「おはよう、もうみんな起きてるぞ」
「ん、ごめん…今すぐいくから」
夢だったのかなとルークは鏡の前に立ち、それを一撫でする。
(…また、感じたい)
思い出しただけでゾクリと奮えたが、出発の朝だ。
ルークは顔を軽く叩くと部屋からでた。
(…っはは)
いなくなった筈の鏡に、ある筈のない像が映る。
(またすぐに会えるさ)
そう、笑うともう一人のルークは鏡から消えた。
END
[
*prev] [
next#]