夜色硝子に踊り交わす緋と紅

「…あのさ、ルーク」
「ん〜?」

優しく髪の毛を撫でていた手を小さく振り払って、ごくりと唾をのむ。
その様子を見て驚いたようなそうでもないような顔をして、ルークは俺を見た。
緊張からなのかそれとも、さっきから止まらない熱いものなのかはわからないが、とにかく心臓が痛い。
それを押さえるようにもう一度のみこんで、口を開く。

「今日、俺がしたい」
「…」

あまり表情を大きく出さないルークが、怪訝そうな目をした。
やっぱり変だっただろうか、と恐る恐る顔を見る。

「どーしたの?」
「…べつ、に」
「嘘、俺がわかんないと思う?」

伊達に似てるわけじゃないとルークは言った。確かにそうだと思う。でもわかられたくない。
いや、きっとわかっていない。ただ俺が何か考えている、ということを悟っただけ。
わかるはずがない、自分だっておかしいと思うんだから。

「いーよ?」
「ッ ん」

ルークの答えを待っていると、何かが俺の口の中をかき回した。
それはルークの指で、くちゅくちゅと舌をかき混ぜるように動かされる。

「してくれんだろ?」

「…、は」

ちゅぷ、と水音をたてて引き抜かれた指との間に銀の糸が落ちる。なんともいえないむず痒さが体を走る。
ルークはベッドに腰掛けて、俺の行動を待っているとでも言うように何もしなかった。
急に恥ずかしくなってきて目をそらそうとしても、じっと見つめられていることになおさら恥ずかしくなる。
高鳴る鼓動を押さえながら、ルークに触れた。


「、ん」

熱いそれに触れると、小さくルークが声をあげた。見上げた先に少し緩んだ顔があることに嬉しくなる。
自分の手の中でぴくんと震えるそれに不思議な感情が込み上げる。
ぐっと根本から抜き上げると、ルークは声をこらえるようにしながら鳴く。
もっと聞きたくなって、手の動きを早める。

「ふ、あ…ッ、ん、ルー、ク」

「……んッ…」

まだ少しスムーズさにかけるものがあって、痛いのではないかと不安になり、唾をたらした。
それだけでもルークのそれは反応し、ぴくんと震える。
塗りたくるようにしてまた動かすと、ぬめりがなんともいえないものを醸し出した。
ただ、早急に快感だけを送りつづける。焦らしも今は、まだ、いらない。
そのままいくこの先には何があるのか知りたかった。それだけの願望だけが頭の中でまわっている。
ひたすら抜き上げる手の中からは、ぬぷぬぷと音が止まない。それも今は自分の与える快感のせい。
そう考えると、そして感じているルークを見ると、それだけで自分にも熱がこもる。

「あ…、ッく」

ぎゅむ、と手のひらの中でそれは張り詰め、ぐぷっとひどい音がした。
かっと体を桃色に染めたルークの顔は、いつものような雰囲気はなく。だからなのかいつもより愛しくて。
イきそうなのだと理解した。それに応える、ように、抜く手に力を込める。

「ッ、は、ぁ!」

ぴくん、とルークの自身と体が震えた瞬間、ぱっと手を離した。
ぎりぎりまで続けた快感を与える行為、それを一気に途絶えさせる。
これから起こること。頭の中だけじゃない現実に起こること、それを想像して思わず目を見張った。

「ッあ!?ふ、ぅ…ッ!!」

ルークは困惑した表情を浮かべ、それでも体をびくんびくんと震わせた。
果てそうで果てない、果てられないことにわけがわからないのか、とまどったまま。しかし甘い声だけはひっきりなしに開いた口から漏れた。
痛いほど張り詰めて熱を持ったそこだけ、違う生き物のようにひくついて出口を求めている。

「すご…、ッ」

はぁ、と思わず息をついていた。その俺を見て、ルークは驚いたような怒ったような表情を浮かべた。
だがその息は荒く、目元は緩んで、未だ体の中をうごめく快感に耐えているかのように思えた。ただ、いやらしいだけ。

「ばっか、やろ…ッ」
「…きもちいい?」

ルークの言ったことに応えず、逆に問いかけた。そのことに苛立ったのか、ルークはぎろりとにらんできた。
それでも自分の中にこもった熱が跳ねるだけで、ただ煽られるだけでしかなかった。
ルークの、ルークの口から、ききたい。

「まだ…もうちょっと、」
「ぁ、ッ」

応えないルークもどうでもよかった。熱いそれを指先で弄ぶと、ルークはそれだけで震えた。
ぞくぞくと腰下から背筋を駆け上がった何か。確実に自分の中で増えてゆく。

「…おっきいのがいい」
「…ふあッ!?」

指先だけだった刺激を一変させて、一気に抜き上げた。またむくむくと欲望を溜めてゆくそのものに、自分の中でまたひとつ。
自分の息が荒くなるのにも気づいていた。

「イきそう?」
「……ッ、」

きゅっと下唇をかんで、ルークは何も応えなかった。それに見かねてありえないほど手のスピードを速める。
痛いくらいの快感も気持ちいいと感じることは知っていた。自分もそうだったから。
鬼頭をぐりっとなで上げ、鈴口をこじあけるように指を入れる。ルークがするように。

「ぁ、ッ…ん…ッ」

堪える姿、それすらも綺麗。

「イきたい?」
「…ッくぅ」

耐えられそうにない自身は押し込めて、必死に抜き上げた。それだけでは足りないのか、いや足りすぎているのか。
定かではなかったけれど、抜き上げる手はそのまま、先端をちゅうっと吸い上げた。

「ん、ふ、…ッイきた、ぃ?」

ちゅるちゅると溢れる先走りを吸い上げる。ルークの限界が近いことも知っていた。
言ってくれるまでは、それを聞くまでは。

「んむ、んん…ッ」

自分が高揚することも抑えきれなかった。何もされていないというのに、体の中をぐるぐるといったり来たりする快感。
床にへばりつくように腰を落とし、自身をこすりつける。
酷いくらいに勃起していたのは予想外だった。

「ルー、クッ、ぁ、ぁあ、あ、」
「ぁっく…、ぁ、イッき、たいぃ、んッ」

ルークの口から漏れた懇願。限界を告げる表情。
自分のイきそうな顔がそのまま映されているようで少し抵抗も感じた。でもルークがそれを見て喜ぶ理由もわかった気がした。
いやらしくて可愛らしくて愛しくて。
それが体の中で爆発するほどに熱く感じた。

「ひッ、 ぅ」

ぐちゅっと音を立てて、また手を離した。それに悔しそうにルークはまた顔を歪める。
ルークが限界なのは目に見えていた。証拠に、先ほどよりも硬く熱くなったそれはひっきりなしにぴくぴくと動き、先端からは酷いくらい先走りを滲ませている。
限界なのは自分も同じだった。
熱のこもった体をどうにかしたい。してほしい。
自分で床にこすりつけるだけでは全く足りなかった。自分で快感を与えることも悪くはないけれど。
目の前にその人がいるのに、自分だけの快感ではこの熱をどうしようもできなかった。

「ルークがッい、ぃ」
「ッ、…ッん、」

ねだるように唇をよせた。柔らかさと甘さが広がってもう我慢などできないと知る。

「、ッ…んん、んッ!」

舌は絡ませたままで、ルークのそれを後秘にあてがって、ぐっと腰をおとした。
慣らしていないそこには大きすぎたせいで、痛みが走る。でもなぜか嫌な気はしない。望んでいた熱さに体は跳ねるだけ。

「…せっま、ッ」

ぎゅちっとゆっくり律動させれば苦しそうな音がもれた。
ぞくぞくと体を走る快感は止まらなかった。自分自身を焦らして、相手を焦らして、ようやっとたどり着いた。
ずっと欲しかった人の温かさ、それはルークそのもの。
ぐっと下から突き上げられる。適確に弱いところを狙われる。
与えられる快感でなければダメなのだと、理性がなくなりつつある頭でぼんやりそう思った。

甘受する刺激の甘さと激しさにルークは意識を手放す寸前だった。

「あ、は…んっ!…」
「く ァっ…!!」

中に放たれた熱い精液を感じて満足そうに倒れこんだルークに長髪ルークはニヤリと笑う。

「なーに、一人満足してんだ?」
「ふっはっ、ぁ!ルーク何してっああぁッッ!!!」

萎える様子のないルークがまた中に勢いよく挿入して。
ぐちゅギチュッッと酷い音がして中のものが溢れた。

「まだまだこれからじゃねぇの?」

悪辣にルークは笑った。
今までの自分の行為が相手にどれだけの影響を与えたのかは分からない。

「ん、ァぅ!ぁっやぁ」
「あれだけ、煽っておいて覚悟しろよ」
「ひあぁっ!!!」

眉が八の字を描き、腰を打ち付けられる度に、矯声があがる。


ずっ…。

「ぁっ」

ずずっ…。

「ぁぁ、ぃ、ゃ」

ずず―っ…。

「いやぁっ、抜いちゃだめえぇ!!」

堪らずルークは叫んだ。
もう、焦されることがもどかしく心臓が切ないくらい締め付けられる。

「俺にはお預けだったのに…それはフェアじゃねぇんじゃね?」
「んぁぅ、ごめ、なさぁ…」

小さくルークは謝ったが、別に怒っている訳ではない。
今は幼く泣きじゃくっているが、自身をくわえているルークは本当に妖艶だった、それはもう肌が粟立つくらいに。

「ルーク」
「な、にぃ?」
「愛してるぜ…俺だけのルーク」
「あぁぅ、っれも…愛、してっひあぁぅっ」

言葉をつむぐ前にルークの中に再度侵入する。

「んぁ、あ、あ、あっ」
「っく」
「ふっく、も、いっちゃぁ!」
「あぁっ、いいぜ、イケよ」
「んンー!、いっやぁあア!!」

内股がひくん、ひくんと震えルークは果てた。

「ン、はぁはぁっ…ぁぅっ」
「まだだろ…っ?」
「んーんーダメぇっ!、もぉ…む、り」
「じゃあ、これは?」

キュッと自身が緩く握られて背が弓の様にしなる。

「んゃあっ、な、でぇ?」
「さぁ?淫乱だからじゃね?」
「んんっこ、なのるーくじゃな、やらぁあっ」

終わらない快感に、幼くなってしまった短髪を長髪は優しく撫でてあやす。

「大丈夫だって、な」
「ん、ちゅ、ふ、」
「ん、は…よしよし」
「っぁ…キモチい、きもちいよぉ」
「もっとヨクしてやるって」
「んっん、あぁっ」

ゆっくりとゆっくりと二人の意識は行為に沈んでいった。

「腰、痛い…」
「だろうなって、そんな恨みがましい目で見るんじゃねぇよ」
だって…」
「それになぁ、元はと言えばお前が「うぁあああ!!///」

「煽るから悪いんだよ」と笑うルークにシーツに顔を埋め、頭から上掛けを被って短髪は羞恥に堪える。

「ルーク」
「…っ」
「ルーク」
「ゃっ」
「ルーク」
「…ぅー」
「可愛い」

そっと顔を見せた彼に、ちゅっちゅっとキスをする。

「お前はそのままでいいんだからな」
「うんっ」

大きく頷いた短髪に内心、ホッとしながら長髪はその体を抱きしめた。



END



夜色硝子に真っ赤なルージュで描いた譜面。
紡ぐのは乱れて、絡まる熱く熱い旋律。




――――――
合作です!


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