曉が詠い告げる唄
今宵は空を翔ける義賊との出逢い。
「世の中物騒になりましたね」
「何が、ジェイド?」
「ルークは少々疎いですよ」
街の一角にある、小さな酒場。
そこに、ルーク…古代語で「聖なる焔」はいた。
中性的な容姿を持ち、その歌声の美しさは一国の皇帝の耳にも入る程。
人は呼ぶ、麗しのローレライ。
「ルーク、拐われないように気を付けてくださいよ」
「何で俺が…」
自分の美しさがどれほど危ういか、この子供は気付かない。
「居たぞ!」
「そこの角を曲がった!」
「馬鹿めっそこの角は行き止ま…っ」
「いないっ!!!」
走り回る憲兵を見ながら、二階の看板に降り立った影は口笛を吹く。
「ふん、この"曉"を追い詰めようだなんて百年早いぜ」
惜し気もなくさらした赤い髪、そこからいつしか、彼の名前は"曉"。
それは、彼が名乗ったわけではない。
「それじゃあ、行くか」
ペロリと舌舐めずり。
今宵の獲物は、歌姫…。
「どんなお声で鳴くかな」
たんっと二階の看板から"曉"は跳んだ。
窓を開け放つと大きな大きな、満月。
「いい風〜…」
ベットに座ってルークはそっと歌を歌い始める。
幼子に歌う、子守唄の類。風に乗った旋律は、夜の街を抜け、犬の遠吠えは止み通りを歩いていた猫もそっと丸くなる。
その屋上に"曉"は座っていた。
(予想以上…)
ゾクゾクと体を震わせ、立ち上がるとそっとそこから滑り落ちた。
「よぅ、いい夜だな」
「誰っ!?」
「名前くらいは聞いた事あんだろ?」
月を背にしょって窓枠に座っている、そいつ。
「もしかして、"曉"?」
「ご明察」
ルークが後ろ手にドアノブを掴んだのを見た彼は一気に距離を詰めた。
「ゃっ…」
「逃がすわけねーだろ」
「やめっ…」
腰に腕を回して、無理矢理ルークの唇を奪う。
「んぁ、ふ…ンンッ」
「へー、いい顔」
「ん、ぃゃ…ぁ」
「歌姫はどんなお声で俺を癒してくれる?」
感じているルークの様子に機嫌を良くしたのか、"曉"は扉の鍵を閉めるとベットに抱いていた体を投げた。
「あ、あんっ!ぃあっ」
「暴れるんじゃねぇよ、暴れただけ痛くなるぜ?」
耳元でそろりと囁けば、ルークは大人しくなる。
「へぇ、歌姫は男か」
立ち上がっている両方の胸の突起をくりくりと刺激してやった。
「ふっ、ぅ、ァアっ!」
「気持ちいいんだろ?」
「んん、顔っ見せてっ怖、ぃ」
シーツに顔を埋めて肩を震わせ泣き出した。
「ちっ、お前名前は?」
「っく、るーく…」
「!!…そうか、ルーク」
ゆっくりとルークの呼吸が落ち着いてきた所で"曉"は顔を覆っていた布を取り去った。
「お前だけに明かしてやる…」
義賊"曉"の正体を。
「俺の名はルーク」
「お、俺…!?」
そこに居たのは間違いなく歌姫ルークの髪を長くした少年で。
「まさかとは思ったが、ローレライが俺の双子の兄だとはなぁ」
「お、俺の弟…?」
「証拠はな…」
膝を掴むとばっと開いて内股を露にする。
「ゃっ…」
「ほら、五つ綺麗に並んだホクロ…」
「ぁ…ン」
「それに、左膝の後ろには痣がある」
「弟」が言うことは全部本当で。
「ホントに俺の家族なんだな」
「あぁ…記憶がないお前と違って俺はあるからな」
「だったら、なんでこんなこと…」
血の繋がった兄弟なんだろとルークは呟いた。
「欲しいと思ったからに決まってんじゃねぇか…俺は義賊"曉"だ」
手の甲に唇を充てて、義賊ルークはさらに言う。
「お前の一夜、頂いていく」
同じエメラルドグリーンの瞳に射ぬかれて、歌姫ルークは恥ずかしそうにその口付けを受け入れた。
「ぁ、ついっ…!」
「ここも、熱いなっ」
「ンっ、ひっぁ…!」
天を仰ぐように勃起したルークの自身をゆっくりとゆっくりと擦り上げていく。
「アァっ!そこばっかり、だめぇっ」
「イイんだろ?これが」
「やぁ、イイからぁだめっなのっ!」
ミルク味の棒アイスが溶けだしたように先走りは止まることなくつうっと軌跡を辿り割れ目を辿り、息づく蕾へと流し込まれていく。
「るーっく、はぁぅ」
「いいぜ、たっぷり鳴いて俺を癒してくれよ」
「あンッッ、!もう中、はやっくっ」
ルークの四肢には白い白いシーツが絡みついて体を彩る。
「純白の姫君を汚すのはこんなにも心地いいんだなっ」
「んんっ、きもち、ィ…!」
くちゅくちゅくちゅくちゅと濡れた音が指を動かす度に聞こえ、ルークの淡い吐息が曉の肌を撫でていった。
「さぁ、頂こうか…姫」
「アッ!ンンンっっ!!!」
美しい、美しい姫の旋律は、曉の舌を伝い喉を落ちていく。
「あっあっ!もっとぉついてぇ!!」
「…たまにはっ、奪われるほど求められるのも悪く、ないぜ!」
「アァっ!!」
抱き起こして肩にルークを月を望む位置に誘い下から突き上げる。
「ひぃあぁっ、も、イクっイク!!!」
「はっ…イケ、よ」
「んん、ぁあぁっ!!!」
「っぁ、、」
前立腺のふくらみを直接叩き上げたのが良すぎたのか、ルークの躰からは力が抜け、気を失ってしまった。
「はン、これだけで気を失うなんてな…まだだ、まだだぜ、お姫様?」
なんたって一夜を頂くのだから。
行為の熱、息遣い、喘ぎ、始終を見ていた月は青白い色から、紅い紅い淫らな色へと変わっていった。
ベッドに終りのない情欲の欠片を残して。
END
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