朱色の楯

「ここ、は?」
「よぅ」
「お、俺?」
「そう、俺はお前」
「なん…で、」
「いいから、寝ろよ…抱いててやるから」

ぎゅっと長髪の俺が抱き締めてくれる。

「休め、今だけならいいだろ」
「う…ん、おや、す、み」

見も心もズタボロなルークを長髪ルークは優しく抱き締めた…表情は険しいまま。



「どういう意味ですか」
「だから、起きないんです」

ジェイドが見に行けば、揺さ振っても何をしてもルークは起きない。

「寝ている状態…と何も変わらないですよ」
「じゃあ、何で…」
「んなのも分かんねぇのかよ」

突然の声に後ろを振り向けば、先程まで眠っていたルークが、座っていた。

「ルークっどういう事!悪ふざけはよしてよね!!」

アニスが指を突き付けてまくしたてる。

「うるせぇよ!ガキっ!!」

ルークの剣幕に仲間の顔が変わる。

「ルーク…」
「治癒師はどっちだ」
「私が…」

ナタリアが一歩進んで、ルークに言う。

「こいつの背中と足頼むよ」
「これは…」

ナタリアは傷を見て思わず顔をしかめる。
すっぱりと切れた皮膚からは真新しい鮮血が滲む。
包帯はすでに血で真っ赤だ。

「なぜ…?」
「何でって?…そんなのも分かんねぇのか」
「それはどういう意味ですか?」

ナタリアが術を使っている間にジェイドがルークに歩みよった。

「そのまんまだよ」
「貴方は誰ですか?」
「俺は、お前たちがルークに殺させた感情の一部だ」

その言葉にぐっと皆が言葉を飲んだ。

「こいつの欲求…と言ったところだよ」

たとえば、生きたいという気持ち、たとえば、してみたいという気持ち。
ルークが捨てた部分。

「今、ルークは?」
「寝てるよ、体も精神も限界だったからな」

どんどんルークの声が低くなる。

「お前らが、あいつを追い込んだ」
「どうして、ルークは何も言ってくれなかったの?」

ティアが冷静に聞いた。

「誰か、聞く耳持ったか?こいつが叫ぼうとしたの誰か聞こうとしたか?
言わないから気付かないなんてな、勝手じゃねぇ?」
「ルーク」
「触るな、誰もこいつに」

キッと、ルークは皆を睨む。

「いくら、ルークが許しても、俺はお前たちを許さないからな…こいつに投げ掛けた言葉の重み…知ればいい…アニス、ナタリア、ティア、ガイ、ジェイド…いや、この世界の奴ら皆だ」

食らった命でこれから生きる奴ら皆。

「俺は誰よりも優しくて弱いあいつを愛してる」

息を飲むだけであとは皆何も言わなかった。

「…ルークが起きる…そろそろ、だな」

ぽつりと呟くとルークはすっと目を閉じてベットに倒れこんだ。

「ルークっ」

ガイが慌てて駆け寄ると抱き上げる。

「ん、ん…ぅ…れ?がい?」
「おはよう、ルーク」
「あれ、皆して…も、もしかして俺寝坊し、た?」

さっと青ざめた顔でルークはガイに聞いた。

「少しだけだよ」

さらりと前髪をガイの手が撫でる。

「ちょっとって、ちょっとでみんな集まるわけないじゃん!!ま、待ってな、すぐに準備すっから」

バッと起き上がったルークをガイはやんわりと止める。

「ガイ?早く準備しねぇと」
「今日は、今日はもう一泊する事に決まったのでそれを貴方に言おうと思ったので皆ここに来たんですよ」

ジェイドの言葉にルークはほっと息を吐いた。

「そう、なのか…」
「お前、疲れてるだろ今日は休め」
「う、うん、ありがとう…じゃあ、悪いけど休むな」

もう一度、ベットに寝転んだ、ルークにタオルケットや毛布を掛けながらガイはおやすみと呟いた。
数十分後、ルークの寝顔に一同は安堵して胸をなでおろした。



END



―――――――――
アビスをやってての疑問。
正直、アニスが許せなかったのは私だけか?
ルークだけが、悪いと100%あの時言えたかなぁと!
ずっと思ってて書けなかったのをちょっと書いてみた。

苦情は受け付けません!









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