あの日言えなかった言葉 上
「ルカちゃんルカちゃん!聞いて聞いて!!秋の妖精さんどっかに行っちゃったのー!!!もう冬の妖精さんがいっぱい!!」
ほらほらと、窓の外を指差すルークにルカは小さく笑う。
「ルーク…今、ホームルーム中、後で話聞くからな」
「うぇ」
「ルーク、元気でいいけどもうちょい早くこいな」
「はーい、ごめんなさい、先生」
元気よく片手をあげて大きく返事をしたルークに、ガイはよろしいと笑うと早く座りなさいと促した。
「ルカー、そいつちゃんと首輪つけとけよー」
「お前、ちゃんと管理しとけって」
いつもの柄の悪い奴等だ。
相手にするだけ無駄で、過去からルカはそれがよくわかっている。
ルークを直接からかわないのは、害を害だとわかっていないルークには全く意味がないからである。
「後でよく言っておくよ」
「わんわんっ!」
犬の鳴き声を真似したのはちなみにルーク。
いたって大真面目である。
「あれ、ネコがよかった?」
「うん、俺、ネコ派だからそっちがいい」
「にゃあー」
「おー、可愛い可愛い」
それじゃあ、行きますかと鞄を持つとルークもヌイグルミを抱えて寄り添ってついてくる。
「おい、無視すんな!」
「あ?まだ、なんかあんの?」
「お前ら、男同士で付き合ってんだろ、気持ち悪ぃ」
聞こえるように言い出した彼らに一瞬、ガッときた衝動をルカは押さえ、口を開こうとするとルークの手が袖口を掴んだ。
「ふぇ?君たちだって今も放課後もずっと一緒にいて付き合ってるじゃない、誰かを好きなことは良いことだよ」
「そういうことじゃねぇよ!お前は黙れ!!!」
ルークのとんちんかんな答えにしびれを切らしたクラスメイトがルークを殴ろうとしてくる。
瞬間、ルカはつきだした拳の腕を掴むとそのまま腕を捻り床に倒した。
「だから彼女できないんだよ」
「ルカちゃん」
「秋の妖精の話だろ、聞くから行くぞ」
「うん!」
教室を出ていった二人に、噂好きの女子グループが集まって話す声が、ティアの耳にも届く。
「ルカくん、かっこいいっ」
「しかも超大人〜!!」
「でもいつもあいつと一緒じゃん」
「ルークくん?」
「そうそう、ヌイグルミ抱えてさ、壁に向かって話かけてるし、気持ち悪い」
「でも、いい子だよ、それに彼に恋愛相談するとうまくいくって噂があって、先輩たちなんかキューピッドって…実は私も相談したんだけど」
「どうだったの」
「ルークくんが、その人は止めた方がいいって必ず、その後の恋の方がいいよって言ってくれてさ…そしたらその最初に好きだった奴が股がけ男だったの!」
「それで」
「で、実はその後すぐに告白されてさ、ルークくんの言った通り」
好みとはほど遠いんだけど、すごくいい人なのとその子が盛り上がったところでティアはそっと席をたった。
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