ギュッてして離さないで




「ねぇ!ルーク、聞いた?」
「何を?」
「あのね」

アニスの話にルークの顔がさっと青ざめる。

「だって、そんな話なにも」
「そりゃ、ルークっていう恋人に告白されましたなんて相談するような先輩じゃないでしょ」
「で、でも」

朝、ルカと会った時も普段と変わった様子なんてなにもなかった。
(先輩…)

しゅんと落ち込むルークの心を読むように、外ではしとしと秋雨が降ってきた。
暫く、中間テストで会えないのに、アニスの噂のせいでルークの中は不安でいっぱいになる。

(先輩は、素敵だからやっぱり俺は釣り合わないのかな)

特に取り柄もないし、特別な何があるわけでもない。
一日ブルーのままルークは初日のテストを受けることになった。



「ルーク、お前が素直に甘えて来るのは兄として実に喜ばしいが、ため息はどうにかならないのか」
「アシュ兄、俺、やっぱり魅力ない?」

背中にぴっとりと貼り付いたルークはアッシュに聞いた。

「お前は世界一可愛い俺の弟、最高に魅力的だがそれがどうかしたか?まさか、ルカの奴と何かあったのか?」
「言っとくけど、先輩悪くないからね」

即行でメールを打ち出した兄に頬を膨らませて注意する。

「ちょっと自分に自信が無くなっただけだから」

あーぁ、先輩にぎゅってされたらもうくっついて離れなきゃいいのにとルークが呟いたのを聞き漏らさずにアッシュは振り向いて、最愛の弟を抱きしめる。

「何、兄ちゃん」
「抱きしめてほしかったんだろう、俺がいくらでもしてやる」
「やだ、鬱陶しい、嬉しくない、早く放して、先輩がいい」

マシンガンのようにルークに言われ、流石のアッシュも少し不機嫌そうに口を尖らせた。

「お前はそんなに俺が嫌いか」
「嫌いだなんて言ってない」

また、ぶっすぅと頬を膨らませたルークは膝を抱えた姿勢でアッシュにされるがままだ。

「お兄ちゃんより先輩が好きなだけ」

回されて離れない腕がルカのものだったらよかったのにとルークは静かにため息をついた。



END








お題:ポケットに拳銃様より







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