lesson7





「やばい!遅刻しちゃっ!!」

家を出た時間はいつも通り。
ただ、迷子になった子を助けたりしていたらすっかりこんな時間だ。

「ひぃ!遅刻やだあああ!!」
「おい!」
「はい!」
「そっち行ったら遠回り!こっちこい!!」

ぐいっと手を引かれてルークは走る。
短い朱毛、同じ制服、ルークよりも高い身長、大きな背中。

「ファブレ先輩!」
「ん?お前、一年だろっ」
「はい、ルークっていいます!」
「一年にそっくりな奴がいるってお前だったのか、よろしくな!」
ニカッと笑った先輩はとても明るくて、ルークは眩しいなと思った。

「いよっし、15分前!」
「はぁはぁっ、すごぃ、間に合った」
「へへへ、もう歩いて大丈夫だな」
「先輩、ありがとうございました」
「いいって、いいって」

よしよしと撫でる手はルークよりも大きかった。


「それでね、それでね、もうお兄さんって感じで、俺もああなりたいなって、お兄ちゃん聞いてる?」
「聞いてるよ」
「なんか反応薄い」
「んー、別に先輩みたくならなくていいよ、俺は可愛いルークでいてほしいな」
「お兄ちゃん」
「ん?」
「大好き」

胸の中に飛び込むとルークは額をすりすりと擦り付けて甘える。

「ルーク」
「だって、それって俺が今のままでもいいってことでしょ?」
「当たり前だろ、俺はありのままのルークがいいんだから」
「だから、お兄ちゃん好きー!」

こんな甘えん坊でもいいとルカは言ってくれるのだから、ルークはとても嬉しい。

「俺のこと、一番好き?」
「うん!ルカ兄ちゃんが一番大好き!」

ルークの言葉に静かにほっと息を吐くと、そっと唇にキスをした。




「ファブレ先輩」
「ルーク、おはよう」
「寝不足ですか?」
「うん、まぁね」

しゃらりと、先輩の首から指輪を通したネックレスが零れた。

「シルバーリング、彼女さんとお揃いですか?」
「これ?か、彼女、かな、まぁ、大事な人とお揃いかな」
「そうなんですか、羨ましい…」

本当に羨ましくて、思わず呟くと心配そうに先輩が顔を覗きこんできた。

「ルーク?」
「あ、いえ、なんでもないです」

二人で歩いていると向かえから、アッシュ先生が歩いてくる。

「先生、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「…」
「お前は挨拶無しか」
「聞こえなかっただけだろ、先生、お!は!よー!ご!ざ!い!ま!す!!!」

これで聞こえただろとフンッと先輩は鼻を慣らした。
あのアッシュ先生にケンカ越しなんて、正直ルークの心の中は真っ青だ。

「随分な態度だな、ファブレ」

地を這うような声。
怖い怖いと思って泣きそうになっていると、見慣れた白衣がルークの肩を抱く。

「こーんな廊下でなーにしてんの」
「ルカ先生!!」
「アッシュ先生、顔、おっかないですよ、他の生徒怖がってるんで…痴話喧嘩は他所でやってくださいよ」
「ちわげんか?」

ぱっと先輩を見ると、真っ赤になっていて、アッシュ先生はと言えば…言葉では言い表せない顔をしていた。

(あれ、先生の指に先輩と同じリング…それに痴話喧嘩って)

気づいてボフン!と今度はルークが続いて赤くなる。

「ほら、二人ともホームルーム遅れちまうぞー、教室に早く行きなさい」
「あ、はい!先輩っ」
「ん、あぁ、ルカ先生さんきゅっ」
「おう、じゃあな」

手を振って二人を見送ると、ルカはアッシュに振り返った。

「人の可愛い弟分までアンタたちのツマンナイ喧嘩に巻き込むの止めてくんない?」
「言いがかりはよしてくれないか」
「今にも襲いそうな顔しててよくいうよ、ほら、先生もう少しで授業ですよ、さっさと行ってくださいよ」
「お前、今に見てろよ」
「おとといきやがれ、デコ」

バチバチと火花を散らしていると、通りすがりの教頭に「お二人とも今日も仲よしねぇ」と笑われ、興醒めした二人は「全くそんなことないです」と教頭に答えると鼻を鳴らして別れた。



END









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