湯たんぽ妖怪と







それは寒い、寒い冬の日の話。


「ちょ、お前ら角砂糖は一人一個にしろっていっつも言ってんだろ」

ルークにコーンスープを作りながら、台所を荒らす妖精ギャングたちを指で弾く。
ローレライの目で見えるようになったルカは、自分より小さい奴らをさらに触ることができた。

「ルーク、ほらスープ、寒かったろ」

ティッシュを鼻にあてチーンと鼻水をかむとルークは小さく笑う。

「今日はでもこれがあるから平気」

いつもの人形の代わりにルークが抱きしめていたのは、手触りのいい真っ白で、ファスナーのついた球体。

「なにこれ」

つんつんとつつくと、球体の閉じていた瞳がクワッと開き、体の端から端まではあるだろう、口がにんまりと笑った。

「うわっ!歯茎きもい」
「これは、ゆったん!元は湯たんぽなんだ、温かいんだよぉ〜」

肌触りも最高なんだとルークはすりすりと頬を寄せる。

「へぇー」

湯たんぽだとルークがいえば、小さな片手を口にあててニカニカ笑っている。

「じゃあ、俺は必要ないわけね」

ソファに頬杖をついて少し唇を尖らせたルカに、ルークは首を傾げた。

「ルカちゃん?」
「…」
「ねぇ、ルカちゃん」

そっぽを向いたルカに、ルークは顔を合わせようと傍による。
なんだか、不穏な雰囲気にゆったんはルークとルカの顔を交互に見つめた。

「るかちゃ…ん」
「それがあれば、俺はいらないだろ」
「やだぁ、いる」
「ルークの欲張り」
「ルカちゃんは意地悪…お膝に乗せて、だめ?」

袖をクイクイッと引っ張ったルークに、ルカは小さく舌打ちをするとルークをぐっと抱き上げてぎゅうっと抱きしめた。

「全くお前には叶わないよ」

ちゅ、とキスをするとルークは満足そうに微笑んでルカにすりすりと顔を寄せる。

「ルカちゃん、温かい!ねー、ゆったん」

二人の雰囲気がふんわりとしたものに変わったのがわかったのか、ルークの腕の中にいたゆったんは小さくニシシシと笑った。



END








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