チェンジリング






「お前が、ルカか」

音もなく、いつからそこにいたのか。
ルカの前に同い年くらいの、これまた深い紅色の髪をした青年が座っている。

「どっから来た、つか、誰?」

ルークの自宅で寛いでいたルカは雑誌を捲りながらきいた。

「俺は「あー、アッシュだー!」

キッチンからいつものティーセットと沢山のお菓子を持ったルークが現れる。

「どうしたの、こっちに来るなら言ってくれたらいいのに」
「カップもう一つ持って来る、ルーク?」
「うん、お願いルカちゃん」

自分の自宅のように棚を開け、カップを取り出してきてテーブルに置いた。

「で、どちら様?」
「あのね、アッシュなの」
「へぇ、アッシュって言うんだ、で、ルークの何?」
「兄みたいなものだ」

答えたアッシュにルカは少しだけ警戒する。

「本当は、俺がアッシュでアッシュが俺なのっ!」

にぱぁっと笑ったルークをルカは撫でる。

「その説明じゃよくわかんねーんだけど、うーん」
「チェンジリングは聞いたことあるか?」
「妖精が自分の子と人間の子を取り替えるっていうやつだろ」
「そうだ、ルークと俺はチェンジリングされたんだ」

ルカは、アッシュの言葉に傍らにいたルークを片腕にきつめに抱く。

「それで、今さらここに来てどういうつもり?」
「ルークがあまりにお前の話ばかりをするもんだから、興味がわいて見に来た」
「それだけか?」
「あぁ」
「じゃあ、いい」

パッとルークを放して警戒を解くと紅茶を一口飲む。

「アッシュ、あっちの生活はどう?」
「今は立派な玉座に座ってる」
「玉座?」
「俺、あっちじゃ王子様だったんだよ、ルカちゃん」
「へぇ、そうなんだ」
「なんだ、驚かないのか?」

アッシュが問えば、ルカは小さく笑ってルークをまた撫でる。

「いちいち驚いてたらこいつの相手務まらねぇよ」
「まぁ、そうだな」
「俺は、こいつと俺の生活に支障がなきゃそれでいい…でもルークがそちらに連れられて行くことがあれば全力で阻止するけどな」
「ルカちゃん、かっこいい」

両手を組んで合わせ、僅かに頬を染めるルークは本当に嬉しそうだ。

「お前たちの日常を壊しに来た訳じゃないから安心しろ」
「ならいい、王様は退屈だろ…たまになら遊びにきていいぜ」
「うん、また来てね、アッシュ」
「ああ、そろそろ帰らないと色々面倒だ、それじゃあな」

来たときと同じようにすっとアッシュは消え、後にルークとルカだけになる。
腕の中にルークがいることに、ルカはほっとすると紅茶の香りが残る唇にキスをした。



END






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