桜花と風




それは、悪戯大好きな精霊の仕業。

「あれ」

ルカは教室を見渡して、目的の人物を探すけれど、彼はいない。

「なぁ、ルーク知らね?」
「知らねぇ、大体お前が知らないんじゃ皆知らねーって」

そう答えたクラスメイトの周りがクスクスと笑う。

「五分くらい前に教室から出ていったわ」
「ティア」
「図書室の方へ行ったと思う」
「さんきゅ、これやる」

ポケットからルークのおまじないのかかった、イチゴミルク味の飴を取り出すとティアの机に置いて駆け出した。

「どこだ…」

今日は何かそわそわした様子で、シルフがとぶつぶつ呟いていたのを思い出す。

「花びら、どこから」

桜の花びらがどこからか舞って廊下に落ちる。

「校内かだけ確かめるか」

一階で靴を確認するとどうやら、校内にはいるらしい。

「よし、一階を」

探すかと言おうとした瞬間に、強風がふいて花びらを巻き込みながら階段から二階へ上っていく。

(風…)

なんとなく、ルカはその先にルークがいる気がして風に乗る花びらを追って走り出した。

「ルーク!」

扉を勢いよく開けると、そこには待ち構えたようにルークがいて、ルカだとわかると両手を広げて抱きついてきた。

「ルカちゃん!」
「…?」
「どうしたの?」
「違う、お前ルークじゃない…どこから来たんだ?ルークはどこにいる?」

体を話して、目の前にいるルークの形をした子に聞く。
すると、その子はそっと、脇のベンチを指差した。

「ルーク!」

さっきまで、確かにそんなところに影などなく、ルカは慌てて近寄るとルークを起こした。
何度か揺さぶるとそっと目を開け、何度か瞬きを繰り返す。

「あれ、るかちゃん」
「よかった、ケガないな」
「どうして」
「…あれ」

指差した先にいた者にルークはさらに目を大きく開く。

「ごめんなさい」

もう一人のルークはそれだけ言うと、ルカの頬に掠めるようなキスをして一瞬で桜の花びらになると風に舞って、淡い桃色の吹雪を作った。

「何だったんだ、一体」

首を傾げつつ、ルカはルークに向き直る。

「ルークさん、何で怒ってるのかな」

頬を膨らませたルークは大層ご立腹の様子だ。

「ルカちゃんの浮気者!」
「な、あれは不意打ちだろ」
「だって!」
「泣くなよ…あれがルークじゃないって直ぐに分かった…他のやつがどんなにそっくりに化けたって俺にはお前が分かる、間違えたりするかっつーの」

ぎゅっとルカはさっきよりも力強く抱きしめた。

「ルークを幸せにできるのは俺だけ」

両手で、顔を押さえると髪をかきあげながら、キスの雨をふらせた。

「んっ…」
「好きだよ、ルーク」
「、…んん…」

ルークはまだ少し頬を膨らませながら、ルカをぎゅうっと抱きしめる。

「風の精霊と桜の妖精が悪戯したの、信じられない!俺がルカちゃんの話したらすぐ悪戯したんだよ!」
「…これくらいなら可愛いけどルーク隠したら俺がどうにかなりそうだって」
「心配してくれたの?」
「すごく」
「ごめんね、探してくれてありがと」

今度はルークからキスをして春の暖かな日差しに二人は小さく笑いあった。



END





「ちゃんと叱っておくからね」
「まぁ、程々にな」
「だめだよ、ルカちゃん悪いことしたらきちんと叱らないと」

何もないところに向かって、叱り飛ばしているルークに母性愛が溢れてるなとルカは静かに見守った。








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