泣かないわ、マイシュガー




「お前の瞳気持ち悪い」

それから、俺はいつも一人だ。
生まれつき、左右の目の色が人とは違う。
最初は悔しくて泣いた時もあったが、今はどうでもよくなった。

「ねぇ、君の瞳すごく綺麗だね」
「は?」

ヌイグルミを抱えて、俺の顔をじっと覗き込む。

「何」

声をかければ、真っ赤になってぶんぶんと首をふって、「ううん、何でも」と答えると向き直ってヌイグルミをあやし始めた。

(変なやつ)

ルークは、いつも屋上で何かブツブツ言ってるし、教室の隅で壁に挨拶してるし、奇っ怪な奴だった。

「で、何で俺はこんなとこに呼び出されてんの」

またかとルカは頭をかく。
何もしてなくても、標的になりやすいのだ。
もう、目の色であれこれ言う輩はいないが今度は勝手な逆恨みでよく呼び出されるのだ。

「今度は、誰くんの誰ちゃんを俺が盗ったってなってるわけ?」
「わかってんなら話が早いよな」

ぐっと拳を構えるのが見えて、ルカもただ殴られるわけにもいかない。
誰だって痛いのは嫌だ。

(しょうがないな…)

同じく構えると、遠くから足音が聞こえてきた。

「見つけたー!!」

どんっと数人を押しのけて飛び込んできたの今朝の奇っ怪なやつだ。

「ローレライのご加護を受けてたのはやっぱり君だった!!」

頬を両手で挟んでまた至近距離で覗き込まれる。

「おい、おま「そうだ、君、左足いるよ!女の人の手が掴んでる…ケガ、気をつけてね」
「な、何言って」
「心辺りないならいいけど…本当に気をつけてね…」

静かに言えば、ルカを囲んでいた奴らは、顔を青くして逃げていった。

「俺、ルーク、君は?」
「ルカ…」
「ルカちゃん、お、俺とお付き合いしてください!」
「はっ?」
「え、あれ…だって皆がこう言えばいいって」

みんなって誰だよと思いつつ、なんだか笑えてきてルカは肩を揺らす。

「ルークは嫌じゃねぇの?」
「何が?」
「この瞳だよ、人と違うだろ?」
「どうして人と違うと嫌なの?ルカちゃんの瞳は特別、ローレライの守護をうけた、もう100年に一回あるかないか、本当に特別なんだよ!」

興奮して話すルークに、ルカはまだ笑いながらローレライってなんだよと言葉を返す。

「久しぶりに笑った、腹痛い」
「大丈夫?」
「大丈夫、なぁルーク」
「なぁに?」
「お付き合いするよ、俺でよければ」

手を差し出せば、もう頬まで染めてルークはその手をぎゅっと握って満面の笑みを浮かべた



END









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