after story1




「ルカくんっ!」
「よぅ、甘えん坊」

大人しく部屋で待っていたルークに軽く口づけながらルカは応える。

「夢見はどうだった、お姫様?」
「…知らない男の人が出てきたよ、ルカくんよりももっと深紅の髪の」

そこまで言いかけてルークは止めた。
ルカの腕にキリキリと力が入るのが分かり、これはタブーなのだと理解したから。

「もう、折角の夢なのにどうしてルカくんが出てきてくんないんだよ」
「悪い悪い、昨日は寝る前の愛が足りなかったんだな」
「る、ルカくん」

あんなに激しかったのにと小声で呟くと、くっくとルカは笑った。

「さぁ、仕事の時間だ…行くか、ルーク」
「うん」

手が汚れることも、血にまみれることも苦ではない。

「えっと、今日は」
「闇オークションを潰す」
「品は助け出して軍の保護施設でいいの?」
「いや、ガイが連れてこいって言ってた」
「優しいね、ガイ」
「そうだな」

黒革の手袋をはめながら二人は衣服を整える。
彼らのしていることは、決していいことではない。
むしろ、犯罪なのだ。

「それじゃあ、行くぞ…手筈通りにな」
「うん!」


そこは異様だった。
仮面をつけた初老の男たちが、舌なめずりをしながらレプリカを品定めしているのだ。

「…気色悪」

ルカは顔をしかめると会場内にいるルークの位置を確かめ、頷きあう。


『ここにいる全員を殺る』


根底を覆さない限り、この腐った世界は変わらない。

(はぁ…最近、わかるようになっちまったなぁ)

嫌でも、脳裏にあの深紅が過る。

(くそ兄貴…)

ルカの思いをよそに、オークションは進んで行く。
決行時間まで後数秒。

(3、2、1…)

会場全ての照明が落ち、ざわめく会場。
ヒュン、ヒュンと風を切る音がする。
ルークのピアノ線だ。

「…っ、」

動脈を狙い、剣を滑らせルカは舞台へ走る。
顔に生暖かな液が飛ぶ。
鉄臭く、酷く不愉快だった。

「ぁぐぅっっ!!」

壇上で仕切っていた男を一振り斬り倒すと剣の血を払い鞘にしまう。
照明が戻り、一瞬眩しさにルカは視力を少しだけ奪われた。
数分間の出来事に会場は血の海だった。

「あ、ぁ、ぁ」

足下ではレプリカがカタカタと震えている。
コバルトブルーの光のない瞳いっぱいに涙をため見上げていた。

「全く、誰かとは大違いだ」
「誰かって、俺のこと?」

ルカとは違い返り血一つ浴びてないルークが微笑していた。

「あぁ」

頷きながら、ルカはそのレプリカを抱き上げる。
初めは嫌がり暴れていたものの次第に大人しくなりルカにすがりついていた。

「残りを片付けたら行くぞ」

大勢のレプリカを連れ出してルークとルカは薔薇館へと帰って行った。












[*prev] [next#]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -