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コポコポ。
コポコポコポコポ。
『水の、音…?』
どうして、俺は死んだはずなのに。
「それは、貴方がレプリカだからですよ」
『―…』
「セーフティーはつけません、安心なさい」
『どうして俺を助けたの』
「わかりません、せめてもの償いでしょうか…総ての根元は私ですから」
『ルカくんに頼まれたんだね』
「…貴方がいないとあの子はいつかイカレてしまう」
狂喜と狂気と凶器。
ジェイドは間近でその様子を見た。
『馬鹿だなぁ…ルカくんてば俺のためなんかに』
「貴方の意に反することをきちんとわかっていましたよ」
『そう…』
「最後まで葛藤していました」
ルークの意志で眠らせるか、蘇生させまた自らの隣におくか。
『俺はいいの、かな…ルカくんの隣に居てもいいのかな』
「それは、帰ってみれば分かると思いますよ」
『ねぇ、お願いがあるんだ』
「何です?」
『俺の記憶、消して』
「…正気ですか」
『うん…これはさ、賭けなんだけど俺自身の気持ちを確かめたいんだ』
「…」
『造られた時のことは何にも覚えてないけど、初めてルカくんに会った時のことすごく鮮明に覚えてるんだ…』
返り血で真っ赤。
それなのに、それなのに、手を伸ばしてしまった。
『今度は、器と核の鎖で結ばれた関係なんかじゃなくて…ただのレプリカでルカくんの隣で居たい』
そうして、愛されてみたい。
「…戦闘能力、生活能力、予備知識以外は全て抹消しましょう」
『…ありがとう、ジェイド…そうだ、最後になんだけどアッシュの遺体ちゃんと弔った?』
「…えぇ、前に貴方から連絡をいただいた場所通り」
『そう、良かった…』
狂ってしまう程、弟のルークを愛してしまった兄。
それから狂気だけで復讐だけで固められた心。
ただ、抱く手だけはいつも優しかったことを記憶を失ってもきっと体のどこかが覚えている…だろう。
『あそこなら、もう淋しくないよ…きっとアッシュを癒してくれる…勝手な思い込みかな』
「…さぁ、ルーク 目を閉じなさい」
『うん…』
回帰する。
次に目を開けた時はこの悲劇とも喜劇とも言えない歯車の話さえ、俺は覚えていないんだ。
さようなら、ルカくん。
さようなら、アッシュ。
さようなら、ルーク。
回帰する。
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