18
オルヴォワール。
世界に、日常に、何より君に。
贈るのは、「さようなら」。
「…お久しぶりですね、父上」
「お前は…今まで一体、何をしていた!!」
バンっっ!!と強くテーブルを叩く父。
「あなたっ…こうして帰ってきたからいいじゃないの」
「用事が済んだら、すぐに出ていきますよ、母上…」
周囲が一瞬で冷えるくらいの笑みでアッシュが母に答える。
それから、蔭にいたルークを自分の横へ立たせた。
「ほら、ルーク お前を棄てた両親だ」
「なっ!!これはどういうつもりだ、アッシュ!!!」
「どういうつもりも何も、俺は愛しい、たった一人の弟を捜していただけですよ」
さらにアッシュはルークの肩をそっと叩いて促した。
「お久しぶりです、父上…そして、さようなら」
悲しいルークの声が響くとピアノ線が、舞う。
「なっ、」
「あなたっ!?!」
ごろんと首が転がる。
切口があまりに綺麗すぎて血が出てくるのが一瞬遅れる。
「母上も」
「あぁ…」
天罰なのですね…という母の言葉はもう、発せられることは一度もなかった。
「ルーク…人間はあっけないものだな」
「そう、ですね…」
言葉とは裏腹。
慈しみ、哀れんだ声のアッシュは両親だったものを足蹴にした。
「漸くこの忌々しいファブレ邸にも別れることができる」
重なって倒れた両親の死体に液体を注ぐと、アッシュはライターを投げた。
「いつの時代も火の赤は綺麗なものだな」
燃え上がる、周囲。
壁に掛けられた写真にも広がっていく。
「さぁ、行くぞ…まだ制裁は済んでいない」
「兄様…その時は」
「ああ、俺の大事な弟と対峙する時だ、楽しみだな、ルーク」
アッシュがどっちのルークに語りかけているのか、判別がつかない。
ただ一つ、理解できたのはこの人が純粋に楽しんでいるということだけだった。
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