14
チェスボードの色は黒と白。
ただ、俺たちのチェスボードは違う。
俺たちのチェスボードは "赤"と"黒"。
ルージュとノワール。
「機嫌が悪いですね」
「何だよ、眼鏡」
「いい加減、ジェイドと呼ぶ気はないんですか」
「…呼んでほしいか?死霊使い…いいや、パパ、かな?」
ルカが甘えた声でパパと呼ぶ。
その理由は手に持たれた分厚い紙の束。
「パーパ」
「止めなさい、気持悪い…これは機密書類の筈ですが?」
「夜中に忍びこんだら、警備の方が寝ていらっしゃったので永遠に眠らせてあげました、俺って優しいー」
くるくると髪の毛をもて遊ぶ。
「腹かっさいてですか?」
「人間の腸はピンク色でぷるぷるしてて綺麗なんだぜ?」
「何人、嘔吐したことか」
「はっ、ヘタレどもだな…まぁ、見事、頭の螺子が弛みに弛みきったヤツが犯人ってことになっただろ、見つけられたらだけどー」
ぽいっとその束を投げる。
「私に言えば、いくらでも機密なんて持ってきて差し上げますよ」
「機密なんていらねぇよ、俺が欲しいのはルークだけだ」
そうたった一人。
俺の愛しい、愛しい、ルーク。
「彼は貴方の留め金ですか?」
「留め金ぇ?
まさか、大佐殿は全て分かっていらっしゃるでしょうに」
漆黒の長刀を手に持つとルカは颯爽とその部屋から消えた。
「…器が核を求める、ですか」
確かに、自然の理ですねぇと何を考えているか分からない表情でジェイドは書類を手にとると破いて、そこにただばら蒔いた。
意味もなく、ルカはルークと歩いた情緒の欠片もない町を辿る。
こうして歩いていれば、もしかしてあの赤毛に会えるんじゃないかとどこかに淡い期待も込めて。
「おにいちゃん」
「んぁー?…んーと、…あん時のガキか」
そう、ルークが助けたいと言ったあの子供だ。
「生きてたかー」
「うん」
高い高いするように持ち上げるとそのレプリカは喜んで笑った。
「おにいちゃんにもお礼が言いたくて」
「あ?俺にもってことはもう一人とは会ったのか?」
「いつも、来てくれるよ」
「いつもか!?」
「うん!さっき別れたばっかりなの」
そう言った子供を一撫でするとルカは駆け出した。
次に会う時は殺しあいだと言っていたがそんなことは関係ない。
関係ないんだ。
「見つけた」
ニィッと緋が笑った。
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