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「、っく…」

ルカくん、ルカくん、ルカくん!!!
貴方が誰よりも大事だから、俺の光、俺の希望…。

「泣いているのか、ルーク」
「ごめんなさい、兄様…そんなつもりじゃ」

お願い、気づかないで!
ルカくんが何より大切なこと、気づかれたらすべてが駄目になる。

「好きなだけ泣けばいい、ルーク」
「あっしゅ、にぃさま?」
「別れに涙はつきものだ…泣いて悪いことはない」
(優しい…どうして…)

こっそりとルーク自身が調べたことによると、フランシス・ダアトの心臓を移植していて、その、ダアトの意識が働いているらしい…でも、今のアッシュにはそんな様子は見えなくて。

(調子…狂う…)

どうしたらいいかわからなく、そっと袖を握るとアッシュは振り払われることはない。
それどころか、指を絡ませて握ってくれる。

「…」
「…」

この人の真意が掴めず、ルークはそのまま寄り添って歩いた。

「…ルーク、もう悲しい思いはさせない、この手で…お前と俺の邪魔をするもの、阻むもの…すべてを消して守ってやるから」
「っ…」

ゾクリと背筋が氷る。
これだ、この瞬間の兄が怖い。
確実に、ダアトを思わせるのはこういう時だ。
何より…アッシュにもダアトにも通じるものがあったのだろうか、意識が働いているわけでなくアッシュ自身が動いているとしたら。

(狂気だ…)

アッシュの優しさはただの狂気だ。

(この人とルークは一体どんな形で引き裂かれたんだろう)

きっと真意はそこにある。
アッシュがこんな風になってしまった原因、それから。

(俺が、こんな体の理由が…)

左胸を押さえてルークは軽く息を吐くと黙々とアッシュに続いて歩いた。












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