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「ご機嫌麗しいですか」
「最悪だよ、眼鏡が」
「ルカ、落ち着け…で、どうした、ジェイドの旦那」
「今日は、依頼を持ってきました」
「珍しいな、どんな…」

写真を見て、ルカは固まる。

「アッシュ・フォン・ファブレ」
「貴族様の息子を何故?」
「ダアト、フランシス・ダアトをご存じですか?」

フランシス・ダアト。
第一級 犯罪者。
快楽殺人、薬、…諸々の罪で捕まった、裏世界では有名なフランシス・ダアト。

「あぁ、知ってる、だけどそれがなんで」
「心臓…」
「ご子息は、心臓移植を受けているんです」
「まさか」
「ええ、フランシス・ダアトの心臓です」

犯罪者の心臓を貴族の息子が移植するのかと気が遠くなる。

「…で、こいつを殺す理由はなんだ」
「ダアトの意識がご子息の中で働いているとしたら」
「そんなこと!!」
「残念ながら有り得るんです」

ジェイドは溜め息をつく。

「今回は、私も手伝います…相手が相手だ」
「おい、本当にそれだけか?」
「何がです?」
「まだ、何か隠しているだろ!?」
「彼の、アッシュの弟の名前がルークというそうです」

自分の感がよく当たることにこの時ばかりは、ルカを唇を咬む。

「ルークが危ない」
「どういうことですか」
「こいつ、何度か俺らに接触してきてる」

もし、客として来ていたら。
ルークは、目隠しされているから顔は知らないと言っていた。
もし、もし、もし…。

「ルーク!」
「ルカ!ちょっと!!」
「退け!アニス!!!」

蹴り破る勢いで、ドアを開けるとそこには誰もいない。

「これはっ」
「嘘!ルークがいない!!」
「っ、ぅああああああああぁああぁ!!!!!」



甘い香りに不釣り合いなルカの絶叫が、薔薇館、全体に響き渡った。











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