二日目「黒い悪魔の要求」



白、白、白。
ただ、真っ白で冷たい光がひらひらと舞い落ちてくる。
そう――雪だ。

「珍しいねー、冬休み初日にもう雪が降っちゃってるよフェノちゃん」
「そうだね。普段ならまだ降らないはずなのに……え?」

驚いて振り返ると、そこにはうっすらと黒い影。
それはゆっくりと具現化していき……どうやら、エコロのようだった。
って、え?ちょっと待って。
なんでエコロ?

「わ、わあ……最高に会いたくないのが出てきた」
「わははははー!こんにちはフェノちゃん!遊びにきたよー」

遊びにきたよ、じゃない!
エコロがこっちに来るとろくなことがないよ。
早速冬休み終了?または異変解決で大忙しからの気が付いたら明日登校日でした宿題やってません?
それだけは阻止しないと。折角の休みなんだからちゃんと遊ばせてよね。
そんな警戒する私を見て、あいつはまた「わはははは」と笑う。

「そんなに警戒しなくたって大丈夫だよ。今日はみんなを楽しませる方法を思いついたからちょっと協力してもらいにきただけだよ」
「とか言いながらまたろくなこと考えてないでしょ」
「失礼だねえ。ボクだってちゃんと考える時は考えるよ?」

エコロは少しだけまじめな顔になって、腕を空に伸ばし大きく飛び跳ねる。
そして、彼(?)がその腕を振り下ろすと――

……え、何これ。

「じゃっじゃーん!クリスマスセットだよ!」
「うわあああっ!?」

エコロが満面の笑みで取り出したのは、まずサンタクロースの衣装。
それからラッピング用紙にリボン、馬鹿でかいもみの木にオーナメント……
なんでこうヘンなものばっかり持ってるんだ、こいつは。

「フェノちゃんにはね、サンタさんになって皆にプレゼントを配ってもらおうと思って」
「はいストップ。どうやってその発想に繋がった」
「……なんとなく?」

エコロは少し考えてそう言い、すぐにいつもの笑顔に戻った。
なんとなくじゃないよなんとなくじゃ。
それってつまりどういうこと?私が夜のプリンプを駆け抜けるの?
嫌だよそんなの。
寒いし私だってプレゼント欲しいし遊ぶ時間も少なくなっちゃうし。

「フェノちゃん、どうせ冬休みで暇でしょ?ほら、やろうよー」
「ただでさえ少ない冬休みをそんなことに使いたくないよ!何よりそんなこと私がしなくても街に働く魔導の力でどうにかなるし!」

猛反発する私を見て、エコロは少し悲しそうな顔をする。
もういいよね、これで用事済んだよね。
そろそろ寒くなってきたし家に入りたいんだけど。
家へ振り返り静かに歩き始めると、エコロは小さく呟いた。

「……プレゼント」
「え?」
「もしこれをやってくれたら、ちょっとだけ豪華なプレゼントをあげようと思ってたんだけどなー」

足が止まる。
別に私が豪華なプレゼントという言葉に反応した訳じゃない。
止められたんだ、こいつの魔導で。

「……ねえエコロ。帰してくれないかな?」
「あげようと思ってたんだけどなー」
「残念だけど私はそういうのは嫌なの」
「プレゼントあげたときの反応も楽しみだったんだけどなー」
「ごめん、謝るから許して」
「どうしても嫌だったらボクも一緒に手伝ってあげるんだけどなー」
「それは自分がやりたいからじゃなくって?」
「フェノちゃんとじゃないとやる気が出ないんだけどなー」
「……」

エコロはそう言いながら、物凄く期待している目をこちらへ向けていた。
なんで期待されてるんだ、私。
何度も言ってるんだけど。やりたくないって。
……やりたくないって言ってるのに。
そんなに期待の目を向けられたらやらざるを得ないじゃん!

「……分かった、やればいいんでしょ」
「えー?でもフェノちゃんさっきまでやりたくないって言ってたじゃん」

こいつ……!!
しかもなんかすごいニヤけてるし!
折角諦めて折れてあげたのになんでそんなこと言うんだ……もう。

「分かった、ごめん。私もサンタクロースやってあげる」
「やってあげる?」
「や ら せ て 下 さ い。さっきからニヤニヤするなってか近付くな!」
「えー?」

完全に私の反応を楽しんでるね、この影。
ため息を深く吐くと同時に、動きを封じられていた体が自由になる。
さーて、大変なことになってきたよ……


エコロはその後、私にクリスマスパーティーを開けと提案(というか命令)したり、後適当に自分の言いたいことを言いたいだけ言って消えた。
クリスマスパーティーかあ……
……ある意味人生最後の日になるかもしれない。(フェーリ的な意味で)



――クリスマスまで、あと6日!


……………………
ということでエコロに振り回されたフェノさんでした。
明日はどうなることやら?

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(3/8)
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