フライアウェイ フライアウェイ


――空気が、変わる。
レムレスは箒を杖に変え、宙に浮く魔法でそれを代用する。箒に乗りながらの魔導勝負は、流石に慣れていないと困難のようだった。
刹那に、フェーリが魔導を展開する。

「アアア・アプライ!」

感受点同士がアスペクトを作ろうとするように、二つの星が星屑を撒き散らしながらフェーリの周りで動き出す。一見光か熱の塊にしか見えないが――それにかすった時、確かに大きな質量を感じた。背中を冷や汗が伝う。

「開始早々、中々本気みたいだね……」

あくまで余裕に見せつつ、自分の発動するべき魔導を考える。
――そこで始めて気付いた。自分固有の魔導は、全て製菓用のものだということに。

「困ったな……これじゃあまともに攻撃できないじゃないか」

自分の持っている攻撃魔導といえば、他にサンダーやファイヤー、それから家系で伝わっているライジングコメット等の多少の彗星魔導しか無い。
しかし、フェーリの使う魔導も星だ。正直そこまで効果的とは言えないだろう。
――なら、どうすれば?

「諦めてください、センパイ……アナタの魔導は殆ど回復魔導、本気のワタシにはあまり通用しないハズよ」
「みたいだね……」

自分の魔導を一応攻撃に使うことはできる。
が、残念ながらフェーリと自分の魔導的相性は最悪に近い。
製菓魔導は一応今回の目標であるナマエには普通に通用する。普段見せているわけでもないし、サタン曰く裏の住人はそもそも表の魔導に適合出来ず回復魔導でさえダメージとなるからだ。以前それでナマエにフォレノワールをした結果致命的なダメージを与えてしまったことも覚えている。

「シェグニフィ……ゲーター!」
「おっと!?……全く、考え事に集中できないじゃないか」
「それがワタシの願いですワ」
「まあ……ね!」

そうこうしている内に次の魔導が飛んでくる。どうやら考えている暇はあまりなさそうだ。
ここは考えるよりも先に初歩的な魔導を使うべきか?それとも何かが見つかることを信じて今は逃げ回るべきか?後者は明らかに地雷なのは分かっている。しかし、本当にいい考えは見つからなかった。
自分の使う魔導は全て見切られ、他の魔導も相性からして威力はたかが知れている。
どうするべきか。自分には今何ができるか――

「逃げるだけではダメです……やっぱり貴方はいつものレムレスセンパイじゃないですワ」
「そうだけど――」

――その刹那、星屑の一つがレムレスに直撃した。
身体が大きく揺らぐ。痛い。身体が一瞬で焼け焦げるような感覚に陥り、血を吐きそうになる。

「っ!」

目の前が霞む。目の前のフェーリが、一瞬微笑んだ気がした。

「意外と呆気ないですね。やっぱり魔導勝負の勝敗の分け目は一瞬――これでトドメ、です」

そう呟き、彼女はダウジングロッドに力を込めていく。動きがスローモーションのように見えたのは、自分が死にかけているからなのだろうか。
……いや、そうなのだろう。自分の身体が落下しているのが分かる。このままではどう足掻いてもやられてしまう。ナマエに辿り着くことができないまま――。
彼は必死に考える。この状況を打開する策は無いか。考える。ただ、頭の中をそれだけにして、逃げることさえ忘れて。

「イングレス、イングレス……プププ・プリンシパルスター!!」

思い出せ、自分には確かまだ何かがあるはずだ。
ナマエに何かを教わったか何かして、忘れられた何かが。
思い出せ、それは確か――


「契符――サーフェイスコントラクト!」

曖昧に結ばれた、淡い契の符。
刹那に、彼の杖から光に包まれた大きな闇の魔導が飛び出した。
それはやがて一直線のレーザーに変化し、彼女の魔導を吸収しながらフェーリに襲いかかる!

「きゃっ!?」

ダウジングロッドを弾かれ、レムレスと同じように魔力のバランスを崩した彼女は地上へ落ちて行く。
彼はそれを見ながら、ただ茫然と肩で息をしていた。……確かに高威力だが少し体力消費が大きすぎる。

「こんなの違うワ……どうしてセンパイはそこまで、」
「ごめんね、フェーリ。もう僕はナマエにしか止められないよ」

いや、ナマエでさえ止められないかもね。枯れた笑みを浮かべながら墜落して行くフェーリに云った。
……気持ちが魔力になるとしても、ナマエのそれは元々強い。勝てる気はあまりしないが今はそうとしか言えなかった。
――さあ、行こうか。
最後にフェーリの落下地点にマシュマロのクッションを置き、彼はすぐに箒に飛び乗った。



…………………………………
U.G.主様は幻想郷出身なのか?
久々に文書いたら書き方忘れてましたわっふい
あと展開忘れたので夢終劇やってきたら六面で泣いた。画面ぼやけた。ピチュった。泣いた。(別の意味で)

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(13/17)
title bkm?
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