全てを知る魔王


「――やはり来たか」

ドアを開くと、そこには少しばかり趣味の悪い、かわいらしさをイメージしたと思われる内装。しかし造りはいかにもな屋敷、ないし城の姿をしている。
そして、その二階から侵入者を見つめるは――その背景に不似合いな、魔王サタンだった。

「……やはり?」
「ああ」

サタンはそう短く呟くと、レムレスの元へふわりと舞い降りる。
彼は一体何を知っているのか。――ふと、魔王の瞳が悲しげに揺れた気がした。

「それって、どういうことですか?」
「何も言うな。私は全て分かっている」

レムレスは困惑した。サタンは一体何を言おうとしているのか。いつもより悲しげな瞳と弱い魔力にも違和感を覚える。

「全て、って」
「言うまでもなくナマエについてのことだ。お前は突然あいつが消えたから同じく突然この世界に訪れた私達に何か聞きに来たのだろう?」

レムレスは頷き、小さくため息を吐く。流石魔王、自分の考えも全て知っているのか。
だが、それは何故だ?何故彼が自分の思考を知る必要がある?

「……貴様、レムレスといったな」
「はい。……あの、ナマエは」
「貴様には少しきついかもしれんが、彗星の魔導師であるお前なら受け入れられるだろう」
「は、はい?」
「……いや、正確に言えば受け入れなければならないと言った方が正しいな」

サタンはレムレスの言葉を遮ると、彼の手を掴む。
そして翼でふわりと羽ばたき――二階、彼がさっき居た場所の後ろにあった扉を魔導で開いた。


そこは、とても暗い部屋。

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