24ぷよ目「分かり切っていた真実」


あれから、私達はおしゃれコウベさんの店でいくつかアクセサリーと雑貨を買った。
一つは小さなハート形のローズクウォーツに、一粒スワロフスキーが付いたネックレス。
これはクルークから渡されたもので、私を縛る鎖らしい。
実際、心理学的にもネックレスを異性に渡すって独占欲の表れなんだよね。
これでまたクルークをいじるネタが増えた。
それからもう一つは私からクルークへ、星を象ったラピスラズリのペンダント。
正確にはチャームだったんだけど、おしゃれコウベさんによってペンダントに変えられました。
クルークのことだから絶対付けないと思ってたら実はこっそり中に付けてた、っていう。
ちなみにこれらは互いの魔力が入ってるから相手の危機とかに反応してくれるようになってる。
……はず。
もういっそシュシュ外してこっちに制御機能つけようかな?
で、もう一つの雑貨っていうのはプラネタリウムマシン。
クルークが結構前から欲しいって言ってたのと、擬似的でも星の下なら私の力も増幅してくれるため。
何で売ってたのかは凄い気になったけど、あえて触れないでおく。

それからアミティと別れ、二人で歩く帰り道。
レムレスに出会ったもののいつもどおり華麗にスルーし、研究所に帰ってきた。
そこにはあやクルの姿は何故かなかったのに、代わりにさっき森に居たはずのレムレスが待っていた。
どういうことなの。


そんな、割と楽しかった昨日。
今日もいつもと同じ感じで過ぎるかと思いきや、そうでもありませんでした。

というか、結構前から立て続けに異変が起きていますが、今回は最後にして最悪の異変だそうで……

長丁場になりそうです。



「黒い影?……ああ、エコロのことかな」
「ええっ!?フェノ、知ってるの!?」
知ってるも何も、一昨日一緒に遊んだし。
「今ね、その黒い影が色々なところで目撃されてるって噂なんだよ!」
「へえ……でも確かにそうだろうね。『もっと皆と楽しいことをしたい』って言ってたし」
「ええっ、喋れるの!?」
「うん、ぷよ勝負もしたよ。案外強かった」
勝負した直後に「また遊ぼうね」って言ってすぐ消えちゃったけど。
「そっかー、私も戦いたかったなー」
「多分いつか出てくるって」
とはいえ、エコロの気質はどう考えてもここの気質じゃなかった。
十界の気質とどこかの気質が混ざったもの……
「……アミティ、エコロにはあまり会わない方がいい」
「えー、なんで?フェ……」
『フェノばっかりずるい』と言おうとしたのかな。
でも、そのアミティの言葉は掻き消される。
……私の顔は、やけに真剣だった。
「私は十界の主故一度や二度くらい死んだって復活する。でも、アミティは死んだらどうなる?」
「……」
「気になるのは分かるよ。でもせめてエコロに会うなら私と一緒に居る時にして」
アミティは不安そうな顔をしながら頷く。
少しきついかもしれないけれど、最悪の事態が発生したら困るからね。
「まあ、問題はあのナルシストなんだけどね。これで繋がってるとはいえ、油断したらどうなることか」
「あはは……確かにやりそうだね」
私はローズクウォーツを握り締め、静かに目を閉じた。
ひんやりとした感覚とともにクルークの気配を感じる。
強く宿された魔力は10000年経っても消えないからね。
……じゃあ、これは後にクルークの形見になるのかな。
そんなの絶対嫌だよ。
魔導界の時の流れは十界より全然長いけれど。
「ま、とりあえず今日も頑張ろうよ」
「うん!」


放課後、研究所……ではなく、プリサイズ博物館の図書館。
私は古い書物をひたすら読み漁っていた。
理由は簡単、十界について調べたいことがあったから。
「えーっと、十界十界……見つからないな」
エコロと出会ってから、私は何故か抜けた記憶が無性に知りたくなった。
十界に居たころの記憶を思い出そうとすると頭痛がするだけで何も思い出せない。
なんで孤独が嫌いなのか、私はこんなに永い間生きているのか。
そして、こんなにもクルークに執着してしまうのか。
今両想いだ、ということも勿論理由の一つだと思う。
でもこの前一瞬だけ見えた走馬灯を思い出す限り、もっと何かあるんじゃないかとしか思えない。
単なる思い込みかもしれない。
でも、何か裏がある気がするんだ。
「あ」
そうして探し回っているうちに、一冊の本が目に留まる。
『封印の書』。
紅い背表紙をした、少々厚めの本。
どこかで見たことがあるような気がするのはなんでだろう?
「……」
中から何かを感じる。
私がそれを手に取り、開いてみると――
「……ッ!?」
「ようやく解放されたか」
そこには、不敵な笑みを浮かべるあやクルの姿。
なんでこの本がここに?
「あやクル、なんで……」
「話は後だ。結界を張る」
「へ?」
あやクルはそう言って目を閉じ、図書館の端のスペースに結界を作る。
私は彼に連れられてそこに入っていった。
「これで問題無い」
溜め息を吐き、次に私を見て妖しく微笑む。
綺麗な紅い瞳は、微かに潤んでいるようにも見えた。
「あの、あやクルがなんでここに居るの?クルークは?」
落ち着いたところで、さっきの話をもう一度。
クルーク、昨日返却と貸出を同時にやってたのに。
「どうやら借りすぎでストップを喰らったらしい。それよりフェノ、こっちへ来い」
借りすぎでストップ……まあ、クルークなら喰らいそうだね。
少し苦笑いをして、あやクルのもとへ歩く。
「フェノ」
そして、予想通り抱き締められる。
あやクルの声はいつもより切なげで、なんとなく嫌な予感がした。
「あやクル、どうしたの?」
「無性にお前が恋しくなった」
あやクルはそれだけ答えて、さらに強く抱き締める。
封印の書が読みたいけれど、どうやら暫くは読ませてくれなさそうだね。
「フェノ、いつかお前をあの者から奪い取ってやる。それまで覚悟しておけ」
「はいはい」
そう言いながら、私もあやクルを抱き締め返す。
彼は私の腕の感覚を感じ、微かに震えた。

――私の日常は、クルークとあやクル、そしてレムレスとアミティが居ることで成り立っていた。
これが、ずっと続いてくれると思っていた。

「ウンメイって、ザンコクでしょ」
今ならフェーリの言葉が分かる気がする。





だって私は、この手で。

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