21ぷよ目「平常運転ってこういうことだっけ」


寒い。
何だかんだ言って天月になりました。
正確に言うと今日は天月10日です。
天月は十界でいう2月。
つまり……
「フェーリイイイイイイイイイイ!!アミティイイイイイイイイイイ!!チョコレート作るぜえええええええええええええ!!」
「「!?」」
もうすぐバレンタインという、なんとも面倒……げふん、素晴らしいイベントがあるのです。
「フッ、相変わらず騒がしいな。早くなんとかしろ」
「また封印(物理)してやろうか貴様」


「さて」
材料の準備はよし、私は鍵部屋の鍵を閉じ、五重くらいに結界を張る。
匂い、魔法、空間、音、光を遮断する特別結界。
「うわあ、結構な封印……」
「邪魔が入ると困るからね。レムレスとかクルークとかあやクルとか」
私はそう言いながら取り敢えず湯煎を始めていく。
今回は私とフェーリとアミティの三人でチョコレートを作るのさ!
まあ冒頭でも言ったけど。
「センパイにチョコレート……これはウンメイね」
「はいはい。今回は三人それぞれで別のものを作るよ」
「フェノは何を作るの?」
「んー……トリュフとフォレノワールかな」
「フォレノ……レムレスか」
私は無言でこくり、と頷く。
この前、頼まれたんだよね。
「フォレノワの作り方はレシピに纏めてもらったから問題ない筈。アミティ、そこのヘラ取って」
アミティはゴムベラを取り出し、私に差し出す。
チョコを溶かしながら練る感じがなんとも楽しい。
「フェノ……ワタシにもやらせなさい」
「ひっ!?待ってチョコレート溶かすまでは共同作業だよ」
いきなりフェーリが背後に出てくるのは正直怖い。
別にいいけれど、せめて殺気くらいは消してほしいな。
「……っと。さ、これを三等分するよ」
三人分のボウルを置き、なるべく均等になるようにチョコレートを入れていく。
保温効果は高いものの、油断は禁物である。
「これにワタシの魔力を入れてセンパイに食べさせれば……」
「頼むから私の負担だけは増やさないでよ」
材料に魔法を入れることを考慮し、魔法結界を弱める。
その間にパーティクルの光と甘い星を一粒。
レムレスには二粒の方がいいかな?
「後は型に入れてパウダー掛けるだけの簡単なお仕事、と」
「も、物凄く適当に言うね……」
だってそうだもん。……冷却魔法でカットできるし。
フォレノワールは本気で作るけど。
「はあ、お菓子にうるさいあのレムレスがまさか貰いたがってるなんてね。それくらいフェーリがやってくれるだろうに」
「そうね……なんでかしら」
だからフェーリ、突然現れるのだけは止めてって。
「むう、まああの時私が目の前に居たのが悪かったんだな。クルークが隣にいるのを無視して突っ込んできて」
そのまだ新しい記憶を思い出し、思わず頬の筋肉が緩む。
面白かったな、あの時のクルーク。
「それより今から冷却魔法掛けるけど、アミティはその格好のままで大丈夫なの?」
「え?」
その格好、半袖半ズボンといういかにも夏らしい服装のこと。
二月なのにまだその格好って……頭限定で防寒対策バッチリなのが惜しいのか惜しくないのか。
ちなみに私は全ての気候に対応できる天界の雲の糸から作られたコートがあるので問題なし。
「大丈夫大丈夫!私はいつでも元気だよ!」
「なら良かった」
微笑みながら段々と意識を集中させていき、手に冷気を宿す。
「それっ!」
チョコレート達は放たれた私の冷気に触れ、しっとりと冷えていく。
冷蔵庫が要らないし短時間で終わらせられるからいいね。
「……っと。よし、これで冷えた!後は盛り付けだけだよ」
「わあ、凄いねフェノ……こんな魔法も使えるんだ」
「魔法はレムレスとクルークに死ぬほど教わったからね」
その分バリエーションも多いよ。
その中でオリジナルを作った結果が連鎖魔法だけど。
氷の魔法、光の魔法、炎の魔法、需要無いけど甘い魔法。
闇の魔法以外なら結構使えた気がする。
「さて、後はココアパウダーをまぶすだけかな。二人とも、終わったらクレームシャンティーとシロ・オ・キルシュ作るの手伝って」
「OK!」
「わかったワ……」
どうでもいいけどシロ・オ・キルシュの材料のキルシュワッサーって料理酒なんだよね。あとさくらんぼのキルシュ漬けのも。
フェーリに作らせたら大変なことになりそ……
「ごめん、やっぱフェーリは自分の作品に集中してて」
「えっ」


チョコレート類を完成させた後、私は結界を解いて部屋に戻った。
そこには、何故かあやクルの姿。
彼は「遅かったな」と言いながらこちらへ近づいてくる。
待って待って、今日はシュシュ一度も外してないよ?
「随分長い間遮断結界の中に居たようだが……何をしていた」
「ちょっとお菓子を作っていたところだよ」
「お菓子……?」
お菓子、という言葉に何故かあやクルは反応した。
レムレスのことを未だに根に持っているのか、それとも察してくれたのか。
「って、それよりも!なんでシュシュを外してもいないのにあやクルが勝手に出てきてるの!?よく考えたらあの時も勝手に出てきてたよね!?」
あの時。
私はクルークに告白され(直され)たあの日の夕方を思い出した。
確か、レムレスに気を取られていたら後ろに……
「ヒントをやろう。お前の魔力が枯渇していた原因、つまり力の源は何だ」
「え?ああ、それならク……」
言い出して、言葉をとめる。
成る程、そういうことね。
「あれで魔力が強くなり、シュシュからはみ出た魔力があやクルを生んだ、と?」
「そういうことだ」
えー……
それじゃあつまり私はレムレスやクルークだけじゃなくあやクルにも苦しめられることになるの?
止めてください死んでしまいます。
「私と常に共存できることを喜ぶがいい」
「共存って……」
また面倒なのが一人増えた。
別にどうだっていいけれど、せめてクルークと融合して出てきたい時に出てくるぐらいのレベルにして頂きたい。
「はあ。、新しい制御シュシュつくろうかな」
ため息交じりに呟き、あやクルに背を向ける。
どうせ結局放置するだろうけど。
「それよりフェノ、そのお菓子とは一体何を作った?」
「はい!?……ああ、人によって違うから正確には」
「お前は何を作った、と聞いている」
「さては食べる気だなあや様」
確かに今日作ったものはお茶請けに丁度いいかもしれない。というかミルクティには絶対合う。
でも流石にバレンタインのチョコレートを今渡すのは流石に……。
「食べないで下さい。まだ熟成中ですから」
「腐らせる気か」
「今のあなたの頭よりは腐っ熱い熱い熱い!!」
今結構うまいこと言ったと思ったんだけどな……
予想はしていたけど、物凄い勢いでイグニスの炎が手を焦がした。
ごめんなさい。私が悪かったです。
「あちち……よくもやってくれたね」
「私とやる気か?」
私が臨戦態勢に入ると、彼は口元を歪ませ不敵なオーラを放つ。
仕方ない、一戦交えてみますか。
「安心して、手加減はするから」
「私に勝てるとでも思っているのか?」
「研究所の中であまり暴れると薬が反応するんだって」
まあ、言っても無駄っぽいね。
早速私もプリズムの魔法を仕掛け、相手の魔法を反射させる。
どうせ暇だもん、クルークが帰ってくるまで、暇つぶしといこうか!

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