始まりの花畑


それから数日。レムレスはまた彼女の下へ箒を飛ばしていた。フェーリやクルークの奇襲を受けながらも彼女に会いに行くその姿はさながら恋人のようである。
何故ここまで彼女に執着してしまうのか。今更考えても意味は無いが。
……そんなどうでもいいことを思っているうちに、彼は目的地に到着する。
ナーエの森の外れにある向日葵畑。今日も花に水を与えながら歌っているのだろうか――

「ナマエ、遊びに来たよ」

箒から降り、花畑の前に立つ。そして彼女の名前を呼ぶ。……彼女が来ない。
それだけではない。いつもなら彼女の力で太陽に花先を向けるはずの向日葵が皆バラバラの方向を向いている。水を与えられていないのかそれらは少しずつ枯れていっているようにも見えた。

何より――静かすぎる。

「ナマエ?どこ?ナマエ―」

おかしい。彼女がこの花畑から出たことなど一度も無いというのに。
なら、彼女は何処へ。
大好きな向日葵達を置いて突然どこかへ消えるなんてありえない。ましてや人外である彼女が。

「……」

彼は困惑した。確かにこの向日葵畑は異常な程に広い。でもだからといって何日も水を与えていない場所ができることも彼女の歌声が敷地内に響かないことも今までに一度も無かった。

「レムレス!」
「ナマエ!?」

背後から彼を呼ぶ声。振り返ればいつも通りナマエが居る……筈だったのだが、そこに居たのは息を切らしたクルークだった。

「……クルーク。言ったよね、僕がナーエの森に行く時は追いかけないようにって」
「ですが……これだけは伝え……なければいけない……と思って……!」

クルークは両膝に手をついて肩でゼエゼエと息をする。どうやら森を全速力で走りぬいてきたらしい。

「……フェーリから聞いたんですけど、ここにはナマエっていう子が居るんですよね」
「え?う、うん」

何故フェーリがそんなことを知っているのか。若干顔を引き攣らせながらも、レムレスは頷いた。

「で、そのナマエが……」

刹那、レムレスの全身から力が抜ける。


――フェーリがナマエを監視していた時、突然彼女は消えてしまったんです

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