それは最期の少し前
――それは夏の日、最期の少し前。彼女は笑っていた。
とても幸せそうに。けれど、その姿は何かを隠しているようにも見えた。
「こんにち……ナマエ?今日はいつもよりボーっとしているね」
「え?……ええ。ちょっと、ね」
箒で空から飛んできた青年――レムレスに向かい、彼女は曖昧に微笑む。それは彼女にしては少し曇っているように見えた。
どうしてそんな曇った表情をしているのか。問おうと口を開いたが、言葉になることはなかった。
――もうすぐ、終わりが来る。
小さく呟かれたそれを聞いてしまったからだ。
彼は戸惑った。何の終わりが来るのか。来るとして何の終わりなのか。
唯一つ分かるのは、それがとても深刻なものだということか。彼女はただ、何かを懐かしむような悲しげな、だがとても幸せそうな表情をしていた。
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