第十三章「砕ける景色」


「――『パラノイア』」

妄執病。強い妄想を抱かせるその魔法は、見えない筈の道を作りだした。
使い方を誤ると自分がそれに飲み込まれてしまう、危険な力。
何時からか、彼女は理由もなくただその魔法を使えるようになってしまっていた。
紅は彼女の魔法に驚きながらも、その造られた道を進んでいく。

「やはり、行ったこともない場所へ移動するのは苦しいか」
「……」

彼女は少し口を開くが、躊躇ってかてすぐにそれを閉じる。
……あの衝動は、一体何だったのか。ナマエは未だそれを理解出来ずにいた。
理由はきっと、それだろう。

空は厚い雲で覆われ、それはまるで彼女の心境を如実に表しているようだった。
今、魔導を使ってまで逃げているその相手は――レムレスである。

「ナマエ、怪我は無いか」
「……何も」

声のトーンも、いつもより低い。
それほど彼が気になって仕方が無いのか。何かを振り払うように首を激しく横に振るが、意味は皆無に等しかった。
耳鳴りがする。頭も痛い。でも、だからといって脳裏に何か映像が出るわけでもない。
なら、これは何のために。
次第にそれは大きくなり、自分の見ているものが曖昧になり始める。
何も考えられない。思考が、ぷつりと音を立てて止まった。

「……ナマエ?」
「なんでも、ない」

ただその言葉を引っ張りだすのも精一杯のようで、彼女は青い顔をしていた。
眩む。自分の見ているものが何かと重なって何が何だか分からない。
目に優しくない紅さえも、曇って見えなくなる。
違う、違う、違う。五月蝿い耳鳴りが一瞬で止まり、風と木々の揺れる音が一際大きく聞こえた。
私は何を考えているの、どうしてここにいるの。わたし、は、


残されたのは、皆無。


………………
ドラクエのルーラってなんで屋内で使えないんでしょうね
しょっちゅう天井に頭ぶつけてました

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