序章3「クルークの暴走」




どうしよう、あいつに見つかったらどうなることやら……
「と、ととっ取り敢えず隠れろー!!」
私は急いで薬品棚の裏に隠れた。
そうだよここには誰も居ないだから早く他の部屋行ってお願いだから!
という時に限って。
「……あれ?何だこのビン」
クルークは、この部屋で立ち止まってしまった。
ちょっと待ってそれまだ効能も何もかも把握してないし危険物だよ!?
「甘いにおいがする……もしかして、また薬作りに失敗してジュースでも作っちゃったのかな?」
そう言いながらクルークはゆっくりとビンのフタを空けてしまった。
ちょっと待って駄目だよそれ飲んじゃ死にはしないけどどうなるか分からないんだってー!!
「いただきまー「駄目えええええええ!!」っ!?」


……遅かった。
飲みました。飲みやがったよこの人。
「ちょっ、クルーク!それまだ作ったばかりで効能も分からないやつだよ!?」
「えっ!?でもこれ結構美味しいけど……」
ああ、そうですか。
……でもまあ、確かに見た感じ特に異変は無さそうだね。
「あ、そうなんだ……じゃあ問題も無さそうだし飲みたければ全部飲んでいいよ」
「本当!?ありがとう。まあ僕に飲まれることを幸運に思いなよ」
はいはい。
……それにしても、またジュースしかできなかったな。
どうすれば別の薬が出せるんだろ?
そう思って薬品棚から薬を選ぼうとしたその時。

――ドサ。

私は何者かに仮眠用クッションの上へ押し倒された。
「!?」
慌てて振り返ると、顔を真っ赤にしたクルークが居た。
まさかあれ……酒?
「ちょっ、ちょっと、クルーク……」
「フェノ〜……」
クルークは甘えた声で一つ呟くと、私をぎゅっと抱き締めた。
耳に甘い吐息が掛かり、思わず鼓動が高鳴る。
「クルーク、放して!今すぐ放して!!」
「嫌だよ〜。だって僕フェノのこと大好きだも〜ん」
「!?」
あ、駄目だこの子。色々な意味で。
クルークは柔らかく笑うと、私を正面に向き直させた。
そして――キス。
「んっ……!?」
「フェノ〜」
クルークは息を荒くしながら何度か違う角度でキスをする。
こ、こんなにクルークって酔い易かったっけ?
「ぷはっ、クルーク、そろそろ放して……」
「嫌だよ〜。もう放さないもん」
お前!!
……それにしてもこんなに壊れたクルーク、見たことないな。
暫くこういう系統の薬は鍵部屋で作ろう。
「フェノ、フェノ〜」
「いちいち名前呼ぶなナルシスト!しかもやけに声大きいし!」
「だって〜好きなものが傍にあるのに何で我慢する必用があるんだい?いらないよそんなの〜」
それ以前に何でその好きなものの中に私が居るのか……
「仕方ない、解毒薬作ってこようか。パーティクル!!」
「ふぇぇ!?」
あちちち、これもう少し自分寄りだったら背中焦げたよ!?
「あー、結界魔法欲しいな……暫く私に近付かないで!おじゃまぷよ召喚!!」
「ええええ〜!?」
あー、何してんだろう私。


……そして、数時間後。
なんとか解毒薬は完成したもののクルーク自体が消えるという事件発生。
そして急いで探しに行くとフェーリやラフィーナ達がかなり迷惑がっていた。
※彼女達には取り敢えず惚れ薬とビューティフルウォーターを差し上げた後逃亡しました

「あ、アコール先生!」
捜索開始から三時間、やっと見つかりました。
何か元に戻ってるし。
「あ、フェノ……ごめん!その……薬、勝手に飲んじゃって」
「はい!?」
ってか何か素直になってるし……
「いや、いいよ。フェーリ達の話を聞く限り評判は酷くなってるけどね」
私はそう言って『ブライト』と心の中で呟く。
「ま、その代わり……ササササンシャインレイ!!」
「えええええええ!?」
……ま、お約束。
「先生、ご迷惑をお掛けしました」
「いえ、いいんですよ。……しかし、クルークさんの好奇心には困ったものですね」
はい、本当に。
「いっつも私の自宅兼研究所に来ては本を読んだり薬品棚を弄ったりしてるんですよ……かなり迷惑です」
「そうですか……彼には暫く寮生活を薦めましょうか?」
「是非お願いします」
うん、即答。
あの人が居ると実験に集中できないし……
「……あら、そろそろ閉校時間ですね。そろそろ学校から出ましょう」
「あ、はい!」


こんな感じの毎日が、私の周りでいつも続いている。
でも、今回は少し大きめな異変が起きてしまったみたいで――

以上で序章終了です。



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