12ぷよ目「知らない記憶」


朝。
昨日は散々な一日だったな、と若干後悔。
まあ色々な人と会えたりしたけどね。
なんてことを思いながら、ゆっくりと目を開く。
「んー……おはうわあああああっ!?」
そして、布団から物凄いスピードで出る。
出ようとする。
……出れない。
落ち着いて見てみると、どうやら私はあやクルのマントにくるまれていたようだった。
「何だいきなり……耳元で大声を出すのはどうかと思うぞ」
「ちがっ……え?なんで?なんであやクルが添い寝してるの!?」
「昨日、私に『後は任せた』と言った筈だ。文句は言えぬよな」
その時、私はうろ覚えだった部分のすべてを思い出した。
ああ、確かにいってたね。
「いやいやいや。だからって普通自分のマントに人をくるんで添い寝させるかね!?」
「私は『危険な魔物』だからな。今回はお前が悪いぞ」
わー、いい具合に反論できない。ちょっとイラッとする。
私はマントからはい出てあやクルの寝ている布団を浮かせ、そのままロールケーキのように丸める。
SU☆MA☆KI状態。
「な、何をする!?」
「てーい」
そして、部屋の角に置いて最後にヒモで結んだ。
これで完成、と。
「ふう、封印(物理)完了、と」
「小癪な真似を……!」
はいはい。小癪でも何でも別にいいから。
私はあやクルを放置して寝室からリビングらしき部屋へ戻る。
勿論、そこにはりんご達が居た。
「ああ、起きて来ましたよメガネさん!」
「メガネ?……って、フェノじゃないか!」
「いやいやいや、なんで皆久々に目覚めたみたいな顔してるのさ」
目を擦りながらいつもの席に着き、突っ伏す。
ああ、眠い……
「あの、フェノ……信じられないかもしれないけれど、フェノは3日ほど眠っていたんだよ」
「はい!?」
え?本気で?
明らかに次の日の朝って感じの流れだったのに?
私はバッと飛び起き、電波時計のカレンダーを確認する。
……本当だ、3日たってる。
月曜日だった。
「ちょ、どういうことなの……」
「力を使いすぎたからじゃないか?その間あいつも一緒に眠ってたから」
クルークの言うあいつは、さっき封印したアレのことで間違いないと思う。
どうりで違和感無いと思った。
「ちなみに……あいつはどこに居るんだい?」
「ああ、罰として封印(物理)中。のり巻きになってる」
「えっ」
私はそう言いながら大きく伸びをし、ふらふらした足取りでキッチンへ向かう。
あれ、何か視界まで揺らいでるぞ
「わー、ふらふらー」
「シグみたいなこと言うなよ……」
いや、なんでこんなにふらふらしてるんだろう。
このまま包丁使うのは難しいって。
「クルークー、今日はあやクルと布団でぬくぬくしてるわ……こんなんじゃ学校行く前に死ぬ」
『あやクル』という言葉に反応して、クルークは立ち上がる。
「なっ、なんであいつなんかと!?」
「なんとなくー」
答えは、至ってシンプルだった。
あまりの私の適当さに、クルークは言葉を失う。
「全く、キミっていうのは……」
「クルークさん、フェノの面倒は私達が見ますから」
「……」
「ふらふらー……これって本当に大丈夫なのかな」
私は席に座り、おもむろに体温計を取り出す。
そして測ってみると……38度。
「あ、高熱」
「えっ!?」
そりゃ、ふらふらするよね。
どうしようもない。
「だ、大丈夫?」
さすがのりんごも心配する、か。いや普段冷たいわけじゃないけど。
「はあ、キミって本当に病気に弱いね。ボクの次に天才のくせに」
黙らっしゃい。
というかクルークの前で病気になったのって久しぶりなんだけど。
「クルーク、後で覚えておきな。……じゃあ、私は向こうで寝てるよ」
私はそう言って再び寝室に入る。
「フェノ……早くこの紐を解いてくれ!」
「断わる。病人に頼らないで……」
「ぐぬぬ……」
簡潔にそう言って、もう片方の布団に潜り込む。
あやクルが頑張って抜け出そうとしている声が、なんとなく可愛く聞こえる。
あえて口には出さないけど。
「はあ……」
それにしても、何もしないで過ごすのは暇だな……
何か考える事はないか、と少し頭を回転させてみる。
……勿論何もない。
強いていうなら昨日のことぐらい、かな。
私は目を閉じながら、昨日の記憶を思い出していく。
そういえば、なんで私はあんなにクルークを護りたかったんだろう。
正直、私にも分からない。
ただ、自分が止まらなかった。
孤独が嫌だから?……何か違う。
異変を起こしたくないから?……確かにそうだけどこれも何か違う。
じゃあ、なんであそこまでクルークに執着したの?
……答えは出ない。
どうしても、クルークだけは譲れない理由。
まさか……いや、違う。違うと信じたい。
でも、もしかして――


闇。
何処を見ても、一面の闇。
――怖い。
久しぶりの恐怖感に、背筋が震える。
忘れてた、寂しい感情。
「……っ」
そこに、ふと過去の自分の姿が映る。
嫌だ、見たくない。
目を閉じても、それは私の目の前から消えてくれない。
そっか、私は逃げたんだ。
こうやって、目の前の孤独から。
目の前の私も何かに逃げだすようにどこかを走っていた。
……そして、逃げた先にはクルークの姿。
そうだね、私はあの後ここに転がってきて最初にクルークに会ったんだ。
それからレムレス達に会って、魔法を学んで、十界との通路を塞いで、研究所を作って……。
その影像は、私の抜けた記憶を全て映していた。
まるでさっきの疑問に答えるように、どのシーンにもクルークの姿も映っている。
……おかしい。
こんなにも仲が良かったのに、どうして私はクルークと仲が悪かったの?
いや、『仲を悪くする必用があった』の?
そして『記憶を失わせる必用があった』?
理由は分からない。
そもそも自分がした訳では無いようだし。
でも……完全に勘だけど、何故かこの先でかなり大きな異変が起きる気がした。
その証拠に、この夢の最後に見えたのは――
「――!!」
曖昧な、黒い影。

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