第十二章「記憶に」


――部屋に入る、一筋の白い光。
なんだか見覚えがある気がして、懐かしい。
そう思ったのは、気のせいだろうか。

「……何者だ」
「やだなあ、そんなに怒らないでよ。僕は光の属性、彗星の魔道師レムレスだよ」
「――!!」

レム、レス。
その名と声を聞き、彼女は目を見開く。
会いたい。会いたい。抱きしめたい。
突然感じたその衝動は、一体何なのか。
今すぐその顔を見たい。今のナマエは、過去の『彼女』と同じ瞳をしていた。

「……ねえ、レムレスは」
「気にする必要は無い。奴は私の敵だ」

紅から離れ、レムレスに近付こうとする彼女を彼は止める。
最悪のタイミングだ、彼は舌打ちをし、ナマエをマントの中に隠した。
それと同時に、レムレスが彗星の速さで紅の前に現れる。
彼女の姿は、彼には見えなかったようだった。

「魔物さん、連れ子を渡して貰おうか」
「ようやく手に入れることができたのだ、今更手放す訳が無かろう……!!」
「ようやく?ってまさか君――」

彼が言葉を発する前に、紅は空間を捻じ曲げる魔導を使う。
戦うわけではない、逃げるためだ。
紅は知っていた。過去の彼女がレムレスに恋をしていたことを。
そして――彼が彼女を好きだった、ということも。


頭が痛い。凄く痛い。
レムレスと一緒に居たいのに、彼のことを思うと「思い出しちゃダメ」って言ってるみたいに頭が強く強く痛むの。
私は、誰が好きだったの?
彼は本当は何なの?
あやクル、もっと教えて。私に全てのことを。


――彼女は、記憶を捨てたことさえ忘れていた。
故に、その理由を知らない。

それは、紅にあったということも。

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