8ぷよ目「ペアでアクティブなぷよ勝負!」



死にかけた。色々な意味で。
あの後私は問答無用の質問攻めに逢い、当のクルークはどこかへ消えてしまっていた。
許すまじ。
と、そんな感じになりながら、私は第一ぷよ勝負室へ歩いていた。
二時間目、アクティブのテスト。
……ああ、クルークが気になって仕方ない。
アミティがふと心配そうに話し掛けてくる。
「フェノ、大丈夫?なんだか凄くボーっとしてるけど」
「だ、大丈夫……だよ」
私は弱くそう言った。
首筋の噛み痕が妙に疼く。
これはやっぱりあやクルの魔法なのか。
「ぜ、全然大丈夫に見えないんだけど」
ですよねー。
考えなきゃいけないことがありすぎて辛い。
授業は完全に分かりきってることしかやらないからいいけどさ。
「あー、なんであいつがよりによって隣の席なんだろう。戦意喪失だよ」
「あはははは……元気出して、フェノ」
うん、頑張る。


「それでは皆さん、準備はいいですか?」
皆から「はーい!」という威勢のよい声が聞こえる。
良くない良くない全然良くないって。
だって……
「先生、なんで私は先生と勝負なんですか!?」
私だけ生徒同士じゃないんだもん!
まあ、生徒同士になったところでクルーク以外に選択肢は無いんだけどさ。
「フェノさんは先生と勝負した方がいいでしょう?クルークさんとは何度も戦っていますし」
「そ、そうですけど……」
私は仕方なく頷く。
でも先生のことだから何かを確かめたい、ともとれるね。
何を確かめたいのかは流石に分からないけれど。
ただ……いいや。
「仕方ない、準備OKです」
「はい。それでは……ぷよ勝負スタート!」
瞬時にネクネクを確認し、適当にフィーリング連鎖と通常ジャブを組みこむ。
「レント!アンダンテ!」
「さあ!行けるかな?これで全部だよ!」
よし、相殺成功と。
いい具合にフィーリングを積み上げ、今度は発火用の導火線五連鎖を作る。
階段積み折り返しは運がよければすぐ積めるし、今回アクティブだから三個ぷよとか邪魔も来ないし!
そうこうしているうちに、先生が攻撃を仕掛けてくる。
「……クレランス!ポポイランス!ファンデチュード!ファンデチュード!ファンデチュード!」
わーい九連鎖!
まだ階段積み三連鎖しかできてないけど……いいや!
「……パーティクル!サンシャインレイ!ミルヒシュトラーセ!ってひいいいいいい!?」
しまった同時消しいいいいい!
ああ、置き方盛大に間違えた……
「大丈夫ですかフェノさん?ソルフェージュ!クレランス!ポポイランス!」
「心配する気ないですよね!?……パーティクル!サンシャインレイ!これで全部だよ!」
まあ私も容赦しないけど。
「スーパーノヴァ!スーパーノヴァ!スーパーノヴァ!スーパーノヴァ!」
で、十連鎖。
正直同じ魔法を何度も使うのは疲れます。
「いや〜ん……あら、負けちゃったわね」
「だから甘く見ないでって!」
一応星ぷよ送って勝てたけど。
私は手に溜めた力を放出し、静かに息を吐く。
ふとクルークをみてみれば、ウィス・アトラヘンディを乱発しまくっていた。
よかった、相手しなくて。
「本当に強くなりましたね、フェノさん」
「まあ、これでも十界の主ですから」
私は苦笑し、アコール先生を見る。
……今ので、さっきまでの予想が確信に変わった。
「アコール先生、もしかして私ならあの影をなんとかできるだろうとか思っていませんか?」
「あら、ばれちゃいました?」
先生はにっこりと微笑む。
やっぱりね。何か対応がいつもと違うもん。
「大丈夫です、異変はちゃんと解決しますから。……勿論クルーク達も巻き込みますけど」
「そうですか。でもフェノさんなら確かに皆を上手く纏められそうですね」
う、それはどうか分からないけれど。
……まあ、なんとかなるよね?
「それでは皆さん、各自一戦は終わりましたね?今度はもっと強い相手と対戦です!」
「へ!?」
ちょ、誰!?


「あれは」
「流石に」
「ムリだー」
上から順に私、アミティ、シグ。
なんでサタン様がご降臨されているんですか。
「むう……油断しなければよかった」
私がそう言って溜め息を吐くと、アミティはそれに反応した。
「いやいや、一本取れてるんだからいいじゃん!というかフェノとクルーク以外全員……」
「「ばたんきゅー」」
「……なんだし」
って、なんで合わせたんだろう。
ふと隣を見ると、流石のシグも少し深刻な表情をしていた。
あ、クルーク結局勝っちゃったのか。
「うーん、この結果を見る限りアミティとナルシスト、それから先生も確定かな?」
「え、何の話?」
「まだ知らなくていい話」
正直あいつと一緒に戦ったら別の意味で異変が起きそうなんだよね……うう。
あやクルの問題もあるし、そんなことまで起こされたらもう死んじゃうよ私。
「さて、と。それにしても今日はペアぷよテストもあるし、それなりに疲れそうだね」
「でもぷよ勝負はとっても楽しいよね!」
アミティはにこりと笑った。
何か話が繋がっているようないないような……
という訳で私も別の話に入る。
「まあ、時間も少し余っていることだし……やっちゃいます?」
アミティはまた笑顔になり、頷く。
「うん、やっちゃおう!」
私達はお互いを指さし、お約束の台詞を言う。
「さて、張り切ってー!」
「素敵で華麗な!」
「「ぷよ勝負!!」」


それからアミティとのぷよ勝負にも見事勝利し、ペアぷよのコツを少しだけ教えてもらった。
後はペアの相方だね……力量がほぼ等しくなるように設定するって言ってたけれど大丈夫なのか。


で、そのペアぷよの時間。
「なんでこうなったのさ……」
「さあ?でもいいんじゃないかな?」
全くもって良くないよこれ。
私は何故か……他校のレムレスとペアぷよをすることになっていた。
誰だエリート召喚したの。これ絶対おかしいよ。
しかも相手がまさかのクルークとフェーリだし!
「フェーリ……今すぐこの立ち位置を交換してくれない?レムレスとなんて恐れ多過ぎる」
「そうよね、私とレムレス先輩は必ず結ばれるウンメイだもの……」
フェーリも本当に一途だね。
あ、クルークはというとレムレスの姿を見た瞬間から硬直していた。
この際誰でもいいからこの修羅場をどうにかして……
「まあまあ、二人とも。今は頑張ってぷよ勝負をしよう。頑張った子には甘いお菓子をあげるからね」
わーい勝つ気が0だよもう!
仕方ないけどさ!
もうこうなったらヤケだ。うん。
ヤケになろう!
「むう……じゃ、行くよ。レムレス、フェーリ、クルーク!」
「甘〜い華麗な?」
「「「ぷよ勝負!!」」」
私達がそう言った瞬間、ぷよが現れはじめる。
レムレスの様子を見ながら階段と折り返しを……
「1!2!3!4!」
「5!6!」
「7!」
ってもう相手七連鎖してるの!?
クルークは私に向かい微笑むと、一気に積まれたぷよを消していく。
結果、
「クールにー?」
「キエエエエエエエ!!」
と、十三連鎖しやがりました。
クールにキエエってどういうこと?
「ってひいいいいいい!そんな事言ってる場合じゃなーい!!」
星ぷよって何星ぷよって!
えーっと、えーっと……
「フェノ、いくよ」
「え?は、はい!」
レムレスが言うと共に、連鎖が始まる。
それに合わせて、私もぷよを消しはじめた。
「7!8!9!」
「10!11!」
「12!13!甘いね。15!」
「16!」
どんどん連鎖は続けられ、気付けば星ぷよを綺麗さっぱりお返ししていた。
これがペア連鎖……楽しい!
「え、ちょっ、フェーリ!」
「アナタこそ、もっと早くぷよを消しなさい!」
フェーリとクルークが喧嘩を始める中、私達は連鎖を続ける。
「やっふー!やっふー!やっふうううう!!」
「まだまだ!まだまだ!まだまだ!まだまだ!」
これだけ見てると変な二人組にしか見えないけど、あっというまに30連鎖。
そして連鎖は終わり――
「仲良く〜?」
「ペア・アタック!!」
ふはははは、これでお返しできまい!
……げふん。
案の定、クルークとフェーリは一気に2つも残機を失った。
これ、本当に実力平等?
「ほ、本気を出すぞ!」
「安心しな、本気を出しても出さなくてもすぐに終わらるよ!」
まだ連鎖は組みかけだけど。
……その時、ふとクルークは怪しく笑いながらフェーリとアイコンタクトをとった。
何か来る……?
「フェーリ、行くよ」
「ええ。かくなる上は」
二人が同時に連鎖のタネに発火を始め――
「「シンクロ連鎖!!」」
って何かいきなり凄い技を出してきたアアアアアッ!!
四連鎖のくせに岩ぷよ2つも来てるよ!?
しかもいい具合に即効性抜群!!
「ひいいいいいい!?ちょ、どうしますかレムレ「頑張ろう……」ってやられてる!?」
わーい、お前ら酷い★
レムレスも油断しすぎだし。
私は溜め息を吐き、体に少しだけ力をこめる。
本気が出せない代わり、といったところかな……!
「はあ……さーて、やってやんよ!」
「「「!?」」」
私の声は、低く変わっていた。
いわゆる「つよいこえのフェノ」といったところだね。
ちょっと自分でも違和感あるけど。
「レムレス、此処からは少し本気もどきで行きましょうか。二人を甘く見すぎですよ」
私がそう言うと、レムレスは固まってただこくん、とだけ頷く。
あれ、もしかしてこれ……恐がられてる?
「……フェノ、もしかしてそれが本気のキミ?」
「本気『もどき』ですね。……さ、いきますよ!」


「ボクのせい!?……ほへぇ〜」
「こんなの違うワ……」
「楽しかったね、フェノ」
「まあこうなりますよねー」
勝利。
絶対パワーバランスおかしいよこれ。
「お疲れ様。とっても甘いぷよ勝負だったね」
「あっあー、んっん。……まあ、それなりに」
レムレスは微笑みながらお手製であろうマシュマロの山を差し出す。
窒息死させる気なのか、この人は。
『甘いものに溺れながら死ぬのが良いのなら、私の甘い愛に溺れて死ぬべきだな』
ちょっ、何処から出てきたのあやしいナルシスト。
『恐らくそのシュシュが緩んで少し力が流れ出ているのだろう』
そうなんだ……
私は黙ってシュシュの封印をし直し、レムレスを無視してクルーク達の方へ歩く。
「あれ、受け取ってくれないの?フェノの大好きなマシュマロなのに」
「なんでそこまで知ってるんですか」
そして、真面目な顔を作り、短く事を伝える。
「レムレス、クルーク、フェーリ……レムレスはもう分かっていると思ってるけど、いまプリンプには異変が起こっているの」
「「!?」」
クルークとフェーリは驚き、そして頭に?マークを浮かべた。
まあ、そうなるよね。
「た、確かに最近外の世界から人が来たりしてきてるけど、なんで……」
「それに、そこまで心配するようなことでも……」
「そうでもないよ。彼女達は私の世界、人間界から来てる。十界で何かあったとしたら、最悪こっちの世界は……滅びる」
私は割と単調に言った。
クルーク達は笑顔を失い、固まっている。
「そ、そんな……」
「そんなの嘘よ……まだ私は先輩と何もしていないワ!」
残酷だけど、今のままだとこうなるよ。
あくまで最悪のケースだけどね。
周りのぷよ勝負を楽しむ友達を見ながら言うのも、かなり辛いけど。
「そこで、だよ。私はこの世界が好きだし、十界の主である以上ここを護らなければならない。……例え、命が尽きたとしても」
レムレスが私の言葉を繋ぐ。
「だからね、二人には協力してもらいたいんだ。出来る限り危険も無いようにするし、クルークもフェーリも僕やフェノのためなら断われないよね?」
「そういうこと。……ってレムレス今凄いこと言いませんでした?」
今とんでもない話を聞いた気がしたんだけど。
クルークとフェーリの方を見ると、二人共顔を赤く染めて頷いていた。
まあ、二人のことだしレムレスには逆らえないか。
「ありがとう、フェーリ、クルーク。……さあフェノ。二人でマシュマロでも食べながら何かお喋りしよう?」
「へ!?」
ちょ、展開おかしくない!?
しかもなんでいきなり……
「いや、あの、レムレス、マシュマロよりアミティ達にも報告しなきゃいけないし、それに喋る相手ならクルークやフェーリが……」
「いーの。僕はキミと話したいんだ」
レムレスは私の手を握り、引こうとする。
ああなんかフェーリの視線が恐いしクルークが黒い……!!
「キエエエエエエエエエ!!」
「ま、待ってくださいレムレス!フェノはこれからボクと実験を……」
「行こう?フェノ。オマケにココアも飲ませてあげる」
「分かったから全員人の話を聞いてえええええええ!!」


\終わりだ!/

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