孤独な流星群


「結構、やるじゃない!」
「ナマエの為ですから……!」


所謂「弾幕ごっこ」、わざと逃げ道を用意した安全かつスリリングな戦争を楽しむためのルールの上で二人は火花を散らしていた。
レムレスは幽香の日傘から放たれるレーザーをすんでのところで避け、懐から魔力補充用のキャンディを取り出して口に含む。


(長期戦は、不利かもしれないなあ)


先程フェーリと魔導勝負をしたばかりであり、消耗した彼の息は既に上がっている。杖から星屑の弾を散りばめるも、大抵は日傘に遮断されて幽香に避けられることすらなかった。


「ひとまず小手調べは終わった、という所ね。どうするの?まだやるなら容赦はしないわよ」
「まだまだ、むしろこれからです!」


飴から魔力補充を終わらせ、彼はゆっくりと息を吐いて手を空へ伸ばした。そう、製菓用の魔導や光の魔導以外にもまだ手はある。
家系の都合上習わざるを得なかった宵闇の魔導──もう二度と使わないと誓ったはずの黒い粒が呪文とともに空へ舞い上がっていく。


「ふうん、そんなこともできるのね」
「できれば使いたくはなかったんですけどね」


額を伝う汗を拭いながら、微笑みを崩さずにレムレスは呟いた。
依然掲げ続けている手から浮かび上がる黒い粒達は、徐々に数を増しながら渦巻いていき巨大なブラックホールを作り上げていく。凄まじい魔力と重力に豪風が吹き荒れ、散らばった星屑達は再び舞い上がり流星のように幽香に迫る──


「随分豪快な魔法ね。でもいいわ、こっちもノッてきた」


空へ「落ちていく」流星群の中で幽香はにやりと笑った。次の瞬間彼女の影は二つに裂け、実体を持つと共に力を溜め始める。
厚さと質量を増す星々の壁、ともすれば突破する手段はひとつ。


「さあ……吹き飛びなさい!」


二人の幽香は息を合わせ、先程とは比べ物にならない程に太いレーザーを壁に向かって放つ。
熱によって星の壁が溶かされていくが、しかしブラックホールによる重力で体勢が定まらないのも事実のようで、本来の威力にはやや届かない。さすが異世界の人間ね、と彼女は賞賛しつつ舌打ちした。


(やっぱりこっちの人間が使う魔法とは性質が違うようね)
(なんとか、上手く誘導出来たのかな)


今度はその重力源を破壊すべく真上にレーザーを放つ。今度は吸い込む力も相まって安定して撃つことが出来た。分身したもう1人の幽香に星弾の処理をさせながら、さらに火力を上げていく──


「これで──」
「ナマエ──」


レムレスが微笑む。
刹那に重力の渦が弾けた。

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