「そう、私に似た娘、ね」
太陽の畑を歩きながら、レムレスは幽香と名乗った少女に経緯を語った。彼女は真剣な眼差しでその物語を聞き、そしてため息をついた。
「そんな人間──いえ、妖怪かしら?どのみち聞いたことないわ。紫や博麗の巫女が騒いでいない以上、幻想郷に居ないのはほぼ確実ね」
「そう、ですか。教えていただきありがとうございます」
「礼なんていいわ。そんなことより、そんな魔導の世界からどうやってここにやってきたのよ?ここは忘れ去られたモノが辿りつく世界だってのに、貴方は元の世界では結構高名みたいじゃない」
「忘れ去られたモノ……?」
幽香は訝しげな顔をしながらレムレスの顔を見上げ、そしてもう一度ため息をついた。
そして一つぽつりと呟く。
「ナマエがこの世界に来ていないのも、貴方が片時も彼女のことを忘れなかったからでしょうよ。消えた後ですら」
「そういう理屈、なのかなあ」
「何せ、ここは全てを受け入れる場所だから」
いずれにせよ、別の世界へ渡ってまでの捜索は空振りに終わったらしい。レムレスはそれを確信し、早くも次はどこを探すべきかと思考を巡らせた。
幻想郷へ来たことも失敗だというのなら──待て、そもそも何故僕はこの世界に来た?
理由は簡単だ。ナマエの扱う魔力に近いモノを感じ、その発信源を突き止めたからだ。
そしてその魔力に似た力は、今も確かに幽香が放ち続けている──
「……裏と表?」
「はぁ?」
突然の呟きに幽香が顔を歪める。レムレスは慌てて手のひらを左右に振った。
「あくまで憶測だけれど、あなたの力がナマエのものと似ているのは表裏一体の存在だからではないか、と」
「何それ、私に表裏なんて無いわよ」
「いえ、そうではなく」
ますます幽香の眉間の皺が深くなる。このままでは埒が開かない、思い切って一か八か賭けてみるべきか──
「あなたと戦わせてください、何かの手がかりになるかもしれません」
もしこの場所が表で、彼女の世界と表裏一体なのだとしたら。
強い力を集めることでナマエと幽香を中心にした世界を一瞬でも裏返せれば──あるいは、
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