37ぷよ目「異変の真実」


「……アルルの相手をしてると思いきや。こんな所に居たんですね」
「もう此処まで来たのか、早いな――十界の主」

空気が一瞬で変わる。密室だというのに、真冬のような冷たい風が吹いた気がした。

「そこに居るのは……クルーク、でしたっけね?もしかして私とサタンに刃向かいに来たの?」
「か、格闘女王……いや、ルルー!ボクはもうあの時ほど弱くなんかないぞ!」

そう――立ちはだかったのは、ルルーとサタン。
エコロの姿は、そこには無かった。

「……サタン。あなたのような下手すると私でも勝てないような大悪魔が何でこんな真似をするんですか」

そんな強すぎる魔力を持った奴がどうして、そう言うと彼は突然笑い出した。
あやクルみたいな喉を鳴らす低い笑いではない、悪代官的な高笑い。正直耳に響いて五月蠅い。

「そうか、お前はあいつの計画を知らないのか」
「計画……?」
「私の力をあいつが拡散して皆の欲望を無条件に叶える。――どうだ、素敵だと思わないか?」

戦慄する。背中にまた冷たい何かが走ったのが分かった。
そんなことしたら畜生界なんてものじゃない。
いくら十界と切り離された世界だとしても、少なくとも輪廻が絶たれるのは間違いないよ。
矛盾が発生してこっちの処理も大変になれば限界を超えて最悪魔導の存在自体が消える可能性もある……

「……単刀直入に言います。サタン、貴方は馬鹿ですか」
「何が言いたい」
「あなたはこの世界を一思いに破壊するほどの人でなしですか、そう言ってるんです!」

今の台詞は間違いなくサタンの逆鱗に触れたと思う。
だとしても、十界の主兼魔導界の見張り人として何としても止めなきゃいけない。
あやクル達も空気を悟り、臨戦態勢に入る。

「……お前も賛同してくれると思ったんだがな。お前の力があれば正に叶えられない望みなど無い」
「お生憎様、残念ながら私はそこまで性根廃れてないです」

にこり、あくまで目を笑わせない作り笑いで言った。
サタンは最後に鼻で軽く笑うと、畳んでいた翼を広げる。

「なら――その力、無理矢理にも奪い取るまで!」

誰が渡すか。私以外の人に与えたら少なくとも暴走崩壊ご臨終は免れないからね。
いくらサタンだとしても流石に危険すぎる……はず。正直実感無いからあんまり分からないけど。
ってそんなことはどうでもいい、今は時間が無いんだって!

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