何処にもいなくても、心は(レムレス)


※多分向日葵のリメイク前の作品



――それは最期の少し前。彼女は笑っていた。
けれど、その瞳からは確かに透明な滴――涙が零れていた。

「レムレス……私は大丈夫ですよ」
「もういい、いいから喋らないで!ナマエが居なくなったら僕は、僕は……っ!」
ナマエ、そう呼ばれた少女は首を横に振り、ゆるりと白い手を少年――レムレスに伸ばす。
が、それはすぐに力尽き、彼の膝に落ちてしまった。
まだ終わらないで。私はまだ、口を動かそうとはするけれど嗚咽のせいで声が掠れ、上手く言葉にならない。
守りたい。一緒に居たい。それなのにナマエの体は段々と冷たくなっていき、反応も静かになっていく。
見ていられなかった。だが目を逸らすことは出来なかった。
ただ、潤んだ目で見つめる。

「レム……レ……」
「ナマエ!」

助けはないのか。彼女をなんとかできないのか。――此処は病院だというのに、死にそうな人に緊急手術か何かをすることはしないのか。できないのか。
怒りは募る。絶望も現在進行形でしている。だが、自分はとても非力で、彼女に何かしてやることが出来ない。
ただ、励ますだけ。

「最期って意外とあっけないものですね。……私、もう限界みたいです」

ナマエは弱々しい声で呟いた。

「そんなこと、僕は絶対に信じないよ!大丈夫、きっと先生がすぐ来てくれるはず、だから!」

それに対し、レムレスは必死になって彼女を励ます。
弱っていく、死んでいく彼女に対し声しか掛けることが出来ない。
これが、どれ程の苦痛か。

「キミはまだ生きるんだ、ナマエ。まだやり残したこともいっぱいあるでしょ?それに僕は……僕は君にしてあげたいことが沢山あるんだ!」

だから生きて、彼は必死になってナマエに叫び、そして体を揺さぶる。彼女は苦しそうに、しかしどこか嬉しそうにまた瞳から滴を零した。
目は潤みきり、溢れた水が雫となり一つ、また一つ。

「レムレ……」
「それ以上何も言わないで!ナマエは……っ!」

今度は彼女を抱き締める。傷を開かないようやさしく、けれども精一杯強く。
その体はまるで彼女の命が体から抜けかけているのを表わすかのように軽く、そして柔らかい。
そして、まだ何か言いたげだったナマエの唇を――塞いだ。


『レムレス、もし生まれ変わってもまた一緒に遊んで下さい。……約束ですよ』


――彼女の最期の言葉は、言葉になる前に何処かへ消えた。



そして、彼女はそのまま静かに息を引き取った。
どこか幸せそうな表情のまま、レムレスの、大好きだった人の腕の中で――



…………………………
本来ならこの後幽霊になったその少女が出てきてヒャッハーする話でした。
けどその前にこの死ぬシーンが綺麗に決まりすぎて書けなくなりました。(そうでもないとか言ったら負け)
ちなみにこれ書いてたのがっつり文芸部です。つまり原作はオリジナルでしたので若干名前が変になってたり噛み合ってなかったりするかもです。
最近没ネタの行方が大体夢小説になってちょっとやばい

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(8/62)
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