不思議な、歌。(サタン)


「――キミの耳に 私のこの 言葉は届いてないのでしょう?
   楽しいんだよ って言葉も 助けてほしい って叫びも――」
「ナマエ?何をしている」

ハッ、として振り向く。
途端に、私の目に少し力が入る。
風になびかせた緑の髪。赤い目。
闇の……貴公子、サタンだ。

「何だ、その間は」
「何でもいいでしょ」

適当に返しておき、また歌い出そうと口を開く。

私は歌が好き。大好き。
たくさんの意味が込められている歌が好き。
作った人の気持ちが込められている歌が好き。
私は、歌が大好き。

「――嫌っている 奴ら達が 私の思いを殺してゆく
   「助けはいらないよ」 その考えはいずこへ――」



「ナマエは本当に歌が好きなのだな」
「まあね」
「それにしても、今の歌は全く聞いたことがなかったのだが」
「そうかな」

でも、と私は思う。
いつも、私は明るい曲を中心に歌うことが多かった。
切ないような歌でも、必ず最後が明るくなるような曲を歌っていた。
でも、なんでだろう。
なんで、こんな暗い曲を歌っているのだろう。

いま、歌っていたのは『もう一度手を』という曲。
深い意味はあるのか、無いのか。
その人次第なんだと、教えてくれた人がいっていた。
記憶が間違ってなければ、ここの世界に来る前、最後に教わった歌だったはず。

「そういえば、アルル達の所に行かなくていいの?」
「少し出かけてくる、といって出てきたから問題ない」
「問題があるんだか、ないんだか」

また歌い出そうとする。
だけど、サタンがこっちを向いた。

「ナマエ、何かあったのか?」
「別に?」
「誰かにいじめられているとか……ないのか!?」
「ないない。絶対にない。誓える」
「それならよいのだが……ほら、ナマエがよく言うだろう?
 歌う人の気持ちも込められている、と。だから少しばかり心配だったのだ」

そっと微笑む。
むぅ……闇のロリコン……じゃなかった。貴公子のクセに……。

「何か言ったか?」
「別に」

私も微笑み返す。再度、歌おうと口を開いた。



「――もう一度だけ 私に手をさしのべてください――」

一人の拍手が聞こえる。

「本当に上手だな」
「それはどうも」

ホントは、サタンの前だったから、機嫌損ねたらどうしようかと。
笑顔って事は、セーフってことでいいのかな?

「行くぞ、ナマエ」
「えっ、どこに?」
「アルル達の所だ。みんな待ってるぞ」

手を、私に真っ直ぐ伸ばしてきた。
驚く私を見ているサタンは、いつも通り。私の知っているサタン。

ひとりぼっちだった私は、きっと、いない、はず。



私よりも大きな、手を取った。



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良く分からん文章を書きたかった。
それにしてもガチで恋愛成分が抜けている件について←


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