旅立ちの少し前の話。


「おぉーぃい!」

誰もいない空に呼びかける。
雲で月が覆われて見えない夜。
たった一人で空に叫ぶ自分。
何度こんなことを繰り返してきたことか。

少し前。
ここから3人の人が消えた。
大好きだったあいつや、親友だったあの子も、頼りになる先輩ですら。
理由はわからない。
誰もが調査に乗り出したが、結局は迷宮入りとなってしまった。
それを聞いたとき、名前を忘れていた雫が私を濡らした。

どこにいるのか。
何をしているのか。
それ以前に、生きているのか死んでいるのかもわからない。

どうして私をおいていったの?
寂しがりやだって知ってるくせに。

だから、いつか戻ってくるんじゃないかと。
私は空に叫ぶ。
両親が寝静まり、草木が眠る時間に。

私は空に叫ぶ。

「おぉーぃい!!」

叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
何回も、何回も。

「あれ?ナマエ?ナマエ!!」
「えっ――」

後ろを振り向いた。
久しぶりの顔が見えた。

ぜんぜん変わっていない彼女は、今までのことを話してくれた。
あの時、消えてしまったこと。
もう一度目をあけたときには、知らない世界だったってこと。

消えてしまった仲間も無事。
そして私を誘ってくれた。新たな世界に来ないかって。

「だって、ナマエは寂しがりやじゃないですか」

覚えていたくせに、一人にしちゃって、さ。



「準備はいい?」
「いつでも!」

懐かしい声とともに、私は彼女が今いる世界へ足を踏み入れた。



遥か彼方の向こうの世界で。
また一人、安全に消えちゃった。



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ナマエさんが、ぷよぷよ世界に行く少し前の話。


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