桜の中に。


春。
私の目の前に桜の木がある。
大きく構えているのに、どこか優しさを感じる。

不思議な、不思議な、この感じ。

この木は、とても変わっている。
春になれば、桃色がちりばめられる。
夏になれば、緑色がちりばめられる。
秋になれば、茶色がちりばめられる。
冬になれば、白色がちりばめられる。

たくさんの色に紛れて、彩られる。
極彩色の世界を見ているように感じる。
ちょっと不思議な、この感じ。

私は、今。
学校にいる『あの人』を待っている。
笑顔がまぶしい『あの人』だ。
それを本人の前で言ったら、なんて言うだろうな。
想像して、思わず笑みがこぼれる。

今、何時だろう?
感覚がよくつかめない。
それは桜の中だからか。
鮮やかな桃色に、包まれている感じ。

そういえば、あのときもそうだったな。
ちょうど、今のような時期。
一人だった私に、一言。

「どうした……?」

って言ったっけ。
語尾は、桃色吹雪にかき消されてよく覚えていない。
語尾に何かをつけていたかも、覚えていない。
ただ、私に手をさしのべて、傘に入れてくれた記憶がある。

そろそろ時間かな?
『あの人』はきっと来てくれる。

……あ。
ぽつり、ぽつりと雨が降る。
ざーざーざーざー音がする。
桜の下にいるものの、雨粒は花びらをつたって落ちてくる。
ずぶ濡れになりそう。
それから冷たい。

人の気配が少なくなる。
普通、自ら濡れようと思う人はいないはずだ。
無彩色の世界に、私がただ一人。

寒い。
一瞬意識が遠くなる。
あれ……風邪でもひいちゃったかな。
変だな、さっきまであんなに元気だったのに。
どうしよう。
遅いな……。

ふらり、と背中が宙に投げ出される。
それを誰かが支えた。

「遅くなってごめん、ナマエ」

ちょっと焦っている『あの人』の表情。
いつもなら冷静なのに……。
思わず笑ってしまった。

「帰ろっか」

彼の差してくれた傘にさりげなく入る。
さりげなく彼は私に身体をくっつける。
それがなんだか、嬉しくて。
私も彼に、くっついた。

桜は、雨に打たれても。
無彩色世界を鮮やかな桃色に染め上げていた。

桜の中。
彼も覚えているのかな。
あのときと同じ、帰り道を。



==========
「誰だよ、相手」
とか思ってしまった方、スミマセン。
あと、文章が文章じゃないですね←意味不明


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